研究課題/領域番号 |
15K01325
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野村 行弘 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (60436491)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 医用画像 / 転移学習 / 画素識別処理 |
研究実績の概要 |
平成28年度は以下の3項目について実施した。 (1) 転移学習による動的性能改善について、実際の臨床現場での応用を見据えて、症例単位での性能改善が可能な転移学習アルゴリズムを構築した。構築したアルゴリズムは損失関数を診断支援ソフトウェアの評価指標として用いられるROC曲線の下面積(AUC)をベースとし、学習済の識別器の特徴量データが不要、でかつ転移学習前より性能が低下しない(負の転移が発生しない)ことに対する理論的保証がされていることが特徴である。頭部MRA画像の脳動脈瘤自動検出ソフトウェアの新規施設への適用を想定したシミュレーション実験の結果、構築したアルゴリズムを用いることで負の転移が発生せず性能改善が図れることを示せた。現在、論文誌への投稿準備中である。 (2) 画素識別器による病変自動検出処理でのオンライン学習を用いた動的性能改善方法の検討に先立ち、学習に必要な病変形状情報入力の省力化による病変検出性能への影響について検討した。胸部X線CTの肺結節検出において放射線科医師が手入力した病変形状、ならびに2種類の省力化手法(病変を直方体のbounding boxで囲んだ領域、病変の中心点とサイズ情報から生成した球状領域)の比較検討を行った。2種類のデータセットを用いた実験の結果、手入力した病変形状領域を用いた場合の検出性能が最良であり、手入力の症例50例を用いた学習で得られる性能と球状領域250例を用いた学習で得られる性能が同程度であった。この成果については、6月に開催される国際会議(CARS 2017)で発表予定である。 (3) 昨年度実施した逐次近似画像再構成法を用いたCT画像における肺結節自動検出ソフトウェアの性能評価に関しては成果の一部が論文に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転移学習を用いた動的性能改善については、臨床現場での使用を見据えたアルゴリズムの改善が実現された。また、肺結節検出での画素織別器の学習における病変形状情報の省力化の影響を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
画素単位で学習を行う識別器を用いた病変自動検出についてオンライン学習を用いた動的性能改善方法、ならびに構築した転移学習手法との組み合わせについて取り組む予定である。さらに、構築した手法の臨床応用に向けたシステムへの組み込みについても検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が少額だったため次年度へ繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
各種データ保存用の大容量ハードディスク等の物品購入、成果発表に必要な国内外の学会参加のための旅費、学会参加費、英文校閲費、投稿料などに使用予定である。
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