平成29年度は以下の3項目について実施した。 (1) 昨年度までに構築した症例単位で性能改善が可能でかつ、転移学習前より性能が低下しない(負の転移が発生しない)ことに対する理論的保証がされているオンライン転移学習アルゴリズムのさらなる改善を図った。得られた成果については国内学会、ならびに総説として発表した。さらに、機械学習関連の国際会議に投稿中である。 (2) 画素識別器を用いた病変自動検出処理の学習に必要な病変形状情報入力の省力化による病変検出性能への影響について検討した。放射線科医師がペイント入力した病変形状を用いた場合、ならびに病変の中心点とサイズ情報から生成した球状領域を用いた場合とで比較検討を行った。2種類の病変自動検出ソフトウェア(胸部CT画像の肺結節検出、頭部MRA画像の脳動脈瘤検出)、3種類のデータセットを用いた実験の結果、球状領域による病変形状情報が医師によるペイント入力の代替となり得ることを示した。得られた成果については国際会議で発表するとともに、論文誌へ投稿中である。 (3) ディープラーニングを用いた病変自動検出ソフトウェアの新規施設への適用を想定した転移学習について検討した。研究代表者所属施設のデータセット300症例で学習した脳動脈瘤自動検出ソフトウェアに対して他施設のデータを用いた転移学習を試みたものの、他施設データの学習症例数が数十症例と少なかったこともあり十分な成果は得られなかった。
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