研究課題
安静時心エコー検査で左室壁運動異常がなく、左室肥大及び有意な弁膜症を認めない、心疾患の既往の無い糖尿病群、非糖尿病群において、handgrip負荷前後の左室global longitudinal strain(GLS、代表的なストレイン指標)の変化を検討した。安静時のGLSは糖尿病群で-20.2、非糖尿病群で-21.4であり、過去の報告どおり糖尿病群で有意に低下していた。Handgrip負荷は最大握力の30%の握力で3分間とし、全例で実施可能であった。また、有害事象はみられなかった。Handgrip負荷後、糖尿病群ではGLSは-20.2から-17.7に低下し、非糖尿病群では-21.4から-19.9に低下した。これを分散分析(反復測定)で検定すると、両群ともhandgrip負荷後に安静時と比較して有意にGLS値は低下しており、かつhandgrip負荷後のGLS値は、糖尿病群では非糖尿病群と比較して有意に小さい結果であった。糖尿病の有無によって、handgrip負荷後のGLSの低下の度合いに影響があるか(交互作用)は、p値が0.08と有意ではなかったものの、その傾向を認めている。糖尿病群では安静時にGLSが非糖尿病群より低下していることはすでに知られている。今回の検討では、糖尿病群では非糖尿病群よりhandgrip負荷によるGLSの低下が顕著である傾向が認められた。糖尿病の左室は一過性の後負荷上昇に対しての代償反応が低下していることが示唆された。
3: やや遅れている
正常例と心不全の既往のない糖尿病患者との比較は検討できつつあるが、本年度予定していた心不全の既往のある糖尿病患者の検討に関しては現在までのところ十分な対象を得られていない。
心不全の既往のある糖尿病群においてhandgrip負荷によるGLSの変化を評価し、心不全の既往のない糖尿病群と比較することで、変化量の違い、心不全発症のカットオフ値などを検討できると考える。現在まで解析した対象のイベントの評価も含め、今後は心不全の既往のある糖尿病患者を中心としてエントリーできるよう引き続き尽力していく所存である。
予定していた国際学会への参加は国内学会と同一日程となり参加を取りやめたことなどから、旅費を中心に余剰金が生じている。
引き続き症例数を増やし、また、国内外の学会へ積極的に参加して最新の知識を得、それらを本研究へ還元しながら進めて行きたいと考えている。また、解析に必要な統計ソフトを新たに購入予定である。
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Circulation Journal
巻: 81 ページ: 346-352
10.1253/circj.CJ-16-0916
Journal of Cardiology
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http://doi.org/10.1016/j.jjcc.2017.02.007