研究課題
昨年に引き続き、安静時の心エコー検査で左室壁運動異常がなく、左室肥大及び有意な弁膜症を認めない心疾患の既往の無い糖尿病群、非糖尿病群において、handgrip負荷前後の左室global longitudinal strain(GLS)の変化を検討した。安静時のGLSは糖尿病群で-19.3、非糖尿病群で-20.9であり、過去の報告どおり糖尿病群で有意な低下を認めた。一方左室駆出率は糖尿病群で65.1%、非糖尿病群で65.8%と、両群に差は認められなかった。Handgrip負荷は最大握力の30%の握力で3分間とし、全例で実施可能であった。Handgrip負荷後、糖尿病群ではGLSは-19.3から-17.0に低下し、非糖尿病群では-20.9から-19.3に低下した。これを分散分析(反復測定)で検定すると、両群ともhandgrip負荷後に安静時と比較して有意にGLS値は低下しており、かつhandgrip負荷後のGLS値は、糖尿病群では非糖尿病群と比較して有意に小さい結果であった。糖尿病の有無によって、handgrip負荷後のGLSの低下の度合いが異なるか(交互作用)を検定したところ、p値が0.026と有意であり、handgrip負荷によるGLSの低下は糖尿病の存在により影響を受ける(糖尿病があることでよりGLSは低下する)ことが示された。一方の左室駆出率は、糖尿病群では65.1%から64%に、非糖尿病群では65.8%から64.4%に変化した。各群内では低下傾向であったが(p=0.07)、交互作用は有意ではなく、糖尿病の有無で駆出率の変化の違いは認めなかった。今回の検討で糖尿病群では非糖尿病群よりhandgrip負荷によるGLSの低下が顕著であることが確認できた。糖尿病の左室は一過性の後負荷上昇に対しての代償反応が低下していることが示唆された。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
International Heart Journal
巻: 印刷中 ページ: 印刷中