研究課題/領域番号 |
15K01327
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大門 雅夫 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80343094)
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研究分担者 |
川田 貴之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20532526)
中尾 倫子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30597216)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 弁膜症 / 3次元心エコー / 弁逆流 |
研究実績の概要 |
本研究は、3次元心エコー法を用いて、虚血性僧帽弁逆流と僧帽弁面積の関連を明らかにすることを目的としている。昨年度までで既に400例以上の3次元心エコーデータを収集して電子媒体に保存し、順次解析を開始している。最初の検討として、これまで左室収縮能が正常で左室拡大を伴わない175例(平均年齢67±15歳)の僧帽弁構造を、YD社製3次元心エコー解析ソフトウェアREAL VIEWを用いて解析した。また、3次元心エコーによる左室容積はPhilip社製 Q-LABを用いて解析した。3次元的な広がりを考慮した僧帽弁葉面積は平均で10.7±1.7cm2、前尖と後尖の接合部分面積は1.8±0.7cm2であった。この僧帽弁葉面積は、逆流を防ぐための僧帽弁閉鎖機能として重要な接合部面積と有意な相関があり(r=0.48, p<0.001)、左室拡大を認めない例においても僧帽弁葉面積は僧帽弁閉鎖機能に重要であることが示された。僧帽弁葉面積は体表面積と密接な関連があり(r=0.907、p<0.001)、僧帽弁葉面積は、先天的に体の大きさによって規定されており、比較的保持されているものと考えられた。この結果により、僧帽弁葉面積を体表面積で補正して検討することは妥当と考えられ、現在は僧帽弁葉面積/体表面積として検討を行っている。僧帽弁葉面積は左室容積係数や左室拡張期圧、透析の既往と有意な関連を示した。また僧帽弁接合面積/体表面積は左室容積係数の他、冠動脈の既往と関連した。これらの結果は、僧帽弁葉面積は比較的体格に応じた大きさによって規定されているが、なお動脈硬化や左室拡大に応じて短縮あるいは拡大することを示している。以上の結果は、日本循環器病学会(2017年3月)および日本心エコーズ学会(2017年4月)で口述発表し、論文投稿準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1ヶ月あたり30~50例の3次元心エコーデータを収集しており、順調にデータ収集が進行している。現在は、さらに僧帽弁葉面積と動脈硬化の指標として脈波速度CAVIとの関連や、大動脈弁狭窄症における機能的僧帽弁逆流を対象にした解析を行っている。機能的僧帽弁逆流の症例がやや不足しているが、研究全体としては概ね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、僧帽弁逆流の症例の登録を増やし、僧帽弁葉面積と僧帽弁逆流の重症度について検討を加えていく。また、これまでの研究結果により、左室の大きさだけでなく形態も重要との着想を得た。解析を進めながら、機能性僧帽弁逆流の新たな病態の解明を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ解析が少し遅れたために、学会発表の機会が少なく旅費が見積もりより少なかったことや、論文別冊代、英文校正代などの支出が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
データ解析はやや遅れたものの概ね順調に進行しており、データがまとまり次第、学会発表、論文化を行う。
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