研究実績の概要 |
これまでの細菌細胞での研究により、抗生物質であり抗がん剤としても用いられる薬剤が交流磁場曝露(60 Hz, 50 mT)により作用増強されること、また、この増強効果は磁束密度に依存することなどを見出した。この磁場による薬剤の増強効果がヒトがん細胞でも見られ有効性が確認できれば、交流磁場を固形がんに曝露することで抗がん剤の効能を病巣のみで高めることができるため、投薬量を減らし、副作用を抑えられる可能性がある。これまでのヒトがん細胞での実験では、抗がん剤シスプラチンが60 Hz, 50 mT 磁場の24時間曝露により、作用増強されることが示唆された(非曝露シスプラチン群に比べ、生細胞数50%減)。しかし,磁場曝露条件は24時間のみに限られていたことから、本年度は、ヒト細胞を培養しながら交流磁場を0~96時間曝露できるシステムを構築し、薬剤作用における磁場影響の曝露時間依存性を検討した。 その結果、ヒト肺がん細胞における抗がん剤シスプラチン作用は60 Hz, 50 mTの4時間曝露によって、非曝露シスプラチン群に比べ生細胞数がより70%減少し、交流磁場による薬剤作用の増強が見られた(有意差あり)。一方、24時間以上の48、72、96時間曝露では非曝露群に比べ、生細胞数はいずれも約20%減程度であり、統計処理では有意差が認められなかった。 これらの結果より、ヒト肺がん細胞でのシスプラチン作用における60 Hz, 50 mT磁場の作用増強効果には、時間依存性が見られ、4時間程度が曝露条件に適することが明らかとなった。
|