研究実績の概要 |
これまでの細菌細胞での研究より,抗生物質であり抗がん剤としても用いられる薬剤が交流磁場曝露により作用増強されたことから,ヒトがん細胞においても交流磁場曝露による薬剤作用の増強効果があれば,固形がんに磁場を曝露することで標的部分における薬剤効果を高めて,投与量を減らし,副作用を抑えられる可能性がある。 本研究では,今年度はヒト肺がん細胞における抗がん剤ドキソルビシン作用への交流磁場曝露による影響を測定した。その結果,磁場条件が60 Hz, 50 mT, 24時間曝露において,ドキソルビシン濃度0.05~0.3 μg/ml の各作用によるヒト肺がん細胞の生存率は,磁場曝露により10~30%減,特に0.25 μg/ml濃度で30%減となり,データ統計処理から有意差があることも確認でき,磁場曝露により薬剤作用が高められることが明らかとなった。また,本研究では磁場曝露2時間程度までのドキソルビシン作用への影響も測定した。その結果,ヒト肺がん細胞の生存率はドキソルビシンのみ群に比べ,磁場曝露群(60 Hz, 50 mT, 2時間)の方が生存率は30%低く,複数回のデータの統計処理から有意差があることも確認できた。さらに,他の抗がん剤アムルビシン作用における60 Hz, 50 mTの曝露効果を検討したところ,アムルビシンにおいては磁場による作用増強は見られなかった。これらの結果から薬剤によって磁場曝露効果に違いがあることが明らかとなってきた。
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