研究実績の概要 |
(1)試作したソフトマテリアルモデル脳の弾性率を測定したところ、平均32.3kPa(19.4~46.5 )であった。また摘出直後の脳腫瘍組織の弾性率測定を行い、初期の4例について解析結果をIMECE2017のposter-paper-publicationにて発表した。脳腫瘍組織の弾性率は1~5kPa前後であり、食品で例えればプリンより硬く豆腐よりも柔らかい。この柔らかさのソフトマテリアルは造形が極めて困難であり、全体脳模型の作成については検討中である。(2)これまでボランティアの健常被検者計9名に同意を得て、異なる体位(仰臥位⇔腹臥位、右向き⇔左向き)によるMRI撮像、解析を行った。解析手法の簡素化、時間短縮化を図るため、内耳構造を基準として異なるMRIデータボリュームで頭部の位置合わせを自動化するプログラムを開発した。さらに今年度、supine、proneおよびleft、rightのボリュームを20x20x20(pixels)のボクセルに分割し、supineおよびleftの分割ボクセルをテンプレートとし、prone及びrightの各ボクセルをレジストレーションして移動(dx,dy,dz)・回転(α,β,γ)を記録した。メッシュ処理を終えたボリュームを脳内部の解剖に基づいて色分けし、脳内部の位置変化・変形の解析をおこなった。安静時の体位変換でも脳表の変位に比べて脳深部での変位は顕著でかつまとまって移動している傾向があることが示唆された。これらの成果をEMBC2017、日本脳神経外科学会第76回学術総会等で報告した。現在論文作成中である。(3)申請者らは、交通事故の受傷状況を有限要素脳モデルで計算上再現し実所見と比較検討することで有限要素脳モデルの精度を向上させていく取り組みを行っている。新鮮な摘出脳腫瘍組織においてヤング率や粘弾性を測定して組織構築や病理学的変化と対比させ、また術前後のMRI画像から定量化した脳の変位・変形をFEM脳モデルへ反映してデータベース化する準備を開始した。
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