本研究は、温度・電気・薬物による各ニューロモデュレーションのてんかん発作抑制効果を比較することで、最適なニューロモデュレーションの組合せや相乗効果について探索することが目的である。 H29年度は、電気刺激は刺激方法が温度や薬物と大きく異なるため、脳冷却デバイスと薬物の微小注入に関して比較検討を進めた。内部に冷却水還流用の水路を有する6ミリ角のステンレス製局所脳冷却デバイスの中央に薬物投与用のカニューレを通すことのできる貫通孔を有するデバイスを用いた。局所脳冷却との比較に使用した薬物は擬似的局所脳冷却効果を引き起こす温度感受性受容体チャネルの作動薬であり、ペニシリンG誘発型のてんかん様異常脳波に対して冷却と同様の異常脳波の抑制効果を確認できた。その効果は濃度依存的に効果を示したが、持続期間は10分以内であった。薬物による作用は冷却と比較して迅速で強力であったが、効果持続時間が短いため、効果発現まで時間が掛かるが持続時間が長い局所脳冷却と併用することによって、電気刺激と同等のオンデマンド制御も可能であると考えられる。 温度・電気・薬物によるニューロモデュレーションのうち温度と薬物による異常脳波の抑制効果のメカニズムは関連があることがわかってきた。難治性てんかん治療のための局所脳冷却技術について、今後はデバイス開発と創薬の両面から研究開発を進ていく。これは、医療機器と医薬品の相互作用により強力な効果を発揮するあたらしい分類の治療技術の確立につながる可能性がある。
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