研究課題/領域番号 |
15K01333
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
岡久 稔也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 特任教授 (60304515)
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研究分担者 |
曽我部 正弘 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 特任講師 (60732790)
中川 忠彦 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 特任助教 (40634275)
小中 信典 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (20380107)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / 内視鏡画像解析 / 大腸内視鏡検査 / 腫瘍診断 / 炎症評価 / 閾値変動内視鏡画像解析法 |
研究実績の概要 |
潰瘍性大腸炎に合併する大腸腫瘍の発見は、内視鏡技術の進歩にも係わらず依然困難であり、腺腫や異形成(dysplasia)を発見した際に全大腸切除を行うか判断に苦慮することも多い。本研究では、潰瘍性大腸炎合併腫瘍の発見および治療法選択を支援するために、腫瘍の発見と鑑別および全大腸の炎症の程度の客観的かつ経時的把握を可能とする内視鏡画像解析・診療支援システムの開発に向けての基盤技術を確立する。具体的には、我々の開発した閾値変動内視鏡画像解析法を発展させ、血管・潰瘍・出血を正確に自動抽出する技術を確立する。次に、前癌病変であるdysplasia、腺腫、癌の非拡大内視鏡画像での血管像の特徴を抽出し、これら腫瘍の発見と鑑別を行うための血管抽出法と画像解析指標を決定する。さらに、大腸の炎症の程度を客観的かつ正確に評価するための画像解析指標を決定する。 平成27年度は、潰瘍性大腸炎の内視鏡画像解析技術の中でもコアとなる【1】血管・潰瘍・出血の描出技術を確立するために、閾値変動内視鏡画像解析法を用いて高解像度大腸内視鏡で撮影した画像の血管・潰瘍・出血の抽出能を評価し改良するための準備検討を行った。また、閾値変動画像解析法を用いて、【2】腫瘍の発見・鑑別技術を確立するために、dysplasia、腺腫、癌の血管像の特徴を画像解析指標を用いて数値化するための画像の抽出および追加撮影を行った。さらに、【3】大腸の炎症評価技術を確立するために、詳細な検討を行う内視鏡画像および生検組織の病理所見を抽出し、炎症の程度を客観的に評価するために炎症関連マーカー(サイトカイン、血管新生因子など)を測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基礎検討の段階で、画像の撮影条件が画像解析結果に予想以上に強い影響を及ぼすことが明らかとなった。そこで、安定した解析法を確立するために、まず特定の最適な条件で撮影された基本画像を抽出し、その画像に関して基本解析法の検討を行い基盤技術を確立した後に、撮影条件の影響を最小とする解析条件の改良を行うこととした。そのために、基本画像の構成(明るさ、方向、距離)を決定し、同じ条件となるように典型画像をノートパッドに掲示しながら、画像の抽出ならびに新たな画像の撮影を行った。 また、オリンパス社製の高解像度大腸内視鏡システム(OLYMPUS CF-HQ29)は、R(赤色)成分、G(緑色)成分、B(青色)成分の3種類の特定波長の光を照射した際の反射光の合成によって画像が構成されており、このシステムを用いて撮影した画像の各成分の調合割合から特定色調の画像成分の抽出を行うためには多くの追加検討が必要なことが明らかとなった。このため、全波長成分の光を照射して反射光より画像を構築するフジノン社製の高解像度大腸内視鏡システム(FUJIFILM EC-L590)の画像を用いて検討を行うこととした。 以上より、フジノン社製高解像度大腸内視鏡システムを用いた大腸内視鏡検査時の最適な条件で撮影された基本画像をサーバー内に保存された画像の中から抽出した。さらに、解析対象となる画像を増やすために新たに当科外来通院中の潰瘍性大腸炎症例の内視鏡画像を解析に最適な条件で撮影した。また、これらの計画変更に伴って、次年度以降に行う予定であった大腸の客観的炎症評価技術を確立するための内視鏡画像および生検組織の採取も同時に行い、炎症関連マーカー(サイトカイン、血管新生因子など)を測定した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果をもとに、フジノン社製高解像度大腸内視鏡システムを用いて最適な条件で撮影された基本画像をもとに、以下の検討を行う。 【1】血管・潰瘍・出血の描出技術を確立するために、閾値変動内視鏡画像解析法を用いて高解像度大腸内視鏡で撮影した画像の血管・潰瘍・出血の抽出能を高めるための改良を進める。現在の閾値変動内視鏡画像解析法を用いて基本画像を解析し、肉眼で確認した血管・潰瘍・出血と比較して描出能(感度・特異度)を評価する。次に、閾値変動内視鏡画像解析法の①抽出色の波長域、②関心領域、③画像描出用テンプレートについて条件を変更し、血管・潰瘍・出血の抽出能(感度・特異度)を向上させる。 【2】腫瘍の発見・鑑別技術を確立するために最適な血管抽出法ならびに画像解析指標を決定し、その発見能、鑑別診断能を評価する。改良した閾値変動内視鏡画像解析法を用い、前癌病変であるdysplasia、腺腫、癌および炎症性ポリープや周辺の粘膜から血管像を描出し、画像解析することによって血管画像解析指標(血管分岐点・交点数、血管径・不揃い度、血管長・不揃い度、フラクタル次元(同一性)など)を算出し、dysplasia、腺腫、癌の血管像の特徴を数値化する。 【3】大腸の炎症評価技術を確立するために、内視鏡所見(Mayor 内視鏡サブスコア:4段階評価および内視鏡インデックス:12点評価)、生検組織の病理所見(Matts組織分類:5段階)および炎症関連マーカー(サイトカイン、血管新生因子など)に最も相関する画像解析指標を決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度(平成27年度)の基礎検討の段階で、フジノン社製の高解像度大腸内視鏡システムを用いて特定の最適な条件で撮影された基本画像を抽出し、その画像に関して基本解析法の検討を行う方針に変更することとなった。この計画変更に伴う研究の遅延を軽減するために、次年度以降に計画していた炎症関連マーカーの測定の一部を平成27年度に行い、予算の残額は次年度の試薬購入のために繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の残額(38,677円)は、次年度の炎症関連マーカー(サイトカイン、血管新生因子など)測定のための試薬の購入のための追加費用として使用する予定である。
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