研究課題/領域番号 |
15K01342
|
研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
桑原 弘行 横浜薬科大学, 薬学部, 准教授 (10598642)
|
研究分担者 |
岩瀬 由未子 横浜薬科大学, 薬学部, 講師 (00521882)
梅村 晋一郎 東北大学, その他の研究科, 教授 (20402787)
弓田 長彦 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (40191481)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 音響化学療法 / 分子標的薬 / CD20抗原 / ポルフィーマナトリウム / 水溶性フラーレン / 活性酸素種 / 超音波 / レザフィリン |
研究実績の概要 |
超音波には、人体の寸法に比べはるかに短い波長において皮下深くまで伝播し、そこに収束させることができるという、レーザやマイクロ波などの電磁波にはない特長がある。一方、超音波照射により発生したマイクロバブルが、音圧により潰れる瞬間、内部の気体が断熱的に圧縮されることにより局所的に生ずる数千度の高温によって引き起こされる化学作用である。我々はポルフィリン系の薬物を併用することにより、この音響キャビテイションによる化学作用を強調し、実験腫瘍の増殖を抑制できることを世界に先駆けて見い出している。近年,超音波照射によって細胞表面抗原の発現を変化させることが,報告されており,この抗体と分子標的治療薬を特異的に結合させ抗腫瘍効果を発揮させることが期待されている.さらに分子標的治療と音響化学療法を組み合わせると分子標的治療薬と抗原あるいは標的分子との結合,音響増感剤の組織集積性,および超音波の集束照射技術の3重のターゲティングが可能となる。 本研究では、分子標的治療単独の治療限界を克服することを目的に、分子標的治療と超音波による薬物の抗腫瘍活性化を利用した音響化学療法を組み合わせた副作用の限りなく小さい新たな治療システムの開発を行うことを目的とする。 今年度は、分子標的薬と音響化学療法との併用による抗腫瘍効果を、培養細胞で確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、分子標的薬と音響化学療法との併用による抗腫瘍効果を、培養細胞で確認した。音響学的抗腫瘍効果を発現し、分子標的薬と併用することにより抗腫瘍効果を増強するポルフィリン誘導体をスクリ-ニングする。ポルフィリン誘導体には、ポルフィーマナトリウム,レザフィリンを、ナノ粒子には、水酸基で修飾した水溶性フラーレン(C60)などを使用した。殺細胞効果の判定は、細胞膜の色素透過能に基づくトリパンブルー排除法とミトコンドリア内の酵素活性に基づくXTTアッセイ法によって行った。そのなかで分子標的薬のリツキシマブとポルフィーマナトリウムの併用が有意な細胞毒性の増強を示した。さらに活性酸素種に特異的な消去剤ヒスチジンによる阻害効果によりそれらの殺細胞作用における寄与を確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は次ぎの①~④の項目を検討する。 ①抗CD20抗体リツキシマブをモデルとした in vitro 薬理試験を行う。CD20発現ヒト細胞株を標的として音響化学を施行時にCell-based CD20 binding assayを行い、EC50およびEC10を見積もる。 ②CD20発現ヒト培養細胞で分子標的薬と音響化学療法との併用による抗腫瘍効果を確認する。 ③音響化学的抗腫瘍効果に関与する活性酸素種を同定する。電子スピン共鳴(ESR)で超音波増感剤の水溶液に超音波を照射したときのOHラジカル, スーパーオキサイドラジカル、一重項酸素などの活性酸素種の産生を測定する。この方法では、それぞれの活性酸素種により安定なニトロオキサイドラジカルになるスピントラップ剤を含む空気飽和緩衝液に超音波を照射し、活性酸素種の生成を確認する。さらに活性酸素種に特異的なスカベンジャ-による阻害効果によりそれら寄与を確認する。電子スピン共鳴装置は本学現有のものを使用する。 ④分子標的薬と音響化学療法を併用によるアポトーシス誘導を確認する。分子標的薬単独、または音響化学療法との併用によるアポトーシス誘導を、培養細胞で確認する。音響化学療法と併用することによりアポトーシスを誘導、または誘導を増強する多分子標的薬をスクリ-ニングする。アポトーシス誘導の判定は、蛍光顕微鏡によりアポトーシス特有の形態変化を起こした細胞を蛍光染色しその数をカウントすることで行う。これに加え、DNA断片化のアーガロース電気泳動による検出とカスパーゼ3の活性化によっても確認する。
|