研究課題/領域番号 |
15K01343
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
重山 昌人 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (90598327)
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研究分担者 |
岩瀬 由未子 横浜薬科大学, 薬学部, 講師 (00521882)
梅村 晋一郎 東北大学, その他の研究科, 教授 (20402787)
弓田 長彦 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (40191481)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アポトーシス / 超音波 / ナノ粒子 / ナノカーボンチューブ / 音響化学療法 / アネキシンV染色 |
研究実績の概要 |
細胞の死は、ネクローシスとアポトーシスに大別される。ネクローシスは、火傷、毒物、ウイルス感染、薬物投与などによる過剰かつ突発的な刺激によって誘発される受動的な細胞死であり、遺伝子に支配されない細胞死として定義されている。また、細胞がネクローシスを起こした際、細胞内容物が細胞外に流出し炎症などの副作用を起こす。一方、アポトーシスは、遺伝子に支配された遺伝子と言われ、生命の根幹に位置する細胞の自己消去機能と考えられている。アポトーシスは死というよりはむしろ生物が獲得した生への戦略手段であると考えられる。がん細胞ではこのアポトーシス誘導機能が、消失あるいは減弱しているために異常増殖して周囲の正常細胞を駆逐し、生命をおびやかすと考えられている。アポトーシスを誘発した細胞は、酵素的に小体に分解され、最終的にはマクロファージに貪食され、副作用を伴わない細胞死として処理される。超音波によってアポトーシス誘導することができれば、より選択的で副作用の少ないがん治療が期待できる。 本研究は、アポトーシス誘導するナノ粒子としてナノカーボンチューブ誘導体を使用し、集束した超音波によるマイクロバブルを生成・破壊さらには、これらナノ粒子の音響化学的活性化作用を用いることにより、これまで困難であった腫瘍組織選択性のアポトーシス誘導を目指すものである。この方法では、ナノ粒子が十分に患部に集積していることを確認した後、薬物の活性化治療に適した超音波を照射することによりナノカーボンチューブ誘導体の活性化による化学的抗腫瘍効果とアポトーシス誘導を発揮させ腫瘍の治療を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、超音波照射により音響化学的に活性化しアポトーシスを誘導するナノカーボンチューブ誘導体を用い腫瘍選択性を備えた新規がん治療法の開発を目指した。ナノ粒子には超音波によって音響化学的に活性化することが期待される水酸化ナノカーボンチューブなどのナノカーボンチューブ誘導体を用いる。最初に培養細胞を用いてこれら水酸化ナノカーボンチューブの超音波による活性化によるアポトーシス誘導をin vitroの実験で確認を行った。アポトーシス誘導の判定は、蛍光顕微鏡による形態変化の観察、アネキシンV染色、DNA断片化のアーガロース電気泳動による検出によって行った。異なる3つの確認法でアポトーシス細胞が同定されたことにより今回の実験でアポトーシスが誘発されていることをかくにんした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は次の①~③の項目を検討する。 ①Hoechst 33342などの蛍光色素を使用すると、アポトーシス細胞のクロマチンの凝集を蛍光顕微鏡下で観察することがきることが報告されている。今後は最初にHoechst 33342を用いて細胞染色を行いクロマチンの凝集を確認する。②アポトーシス誘導には、いくつものシグナル伝達経路が関わっていると考えられ、それらのなかでも主経路としてカスパーゼによるシグナル経路が報告されている。 本実験においては、エフェクター・カスパーゼであるカスパーゼ-3とイニシエーター・カスパーゼであるカスパーゼ8および9の活性化を経時的に測定する。さらにアポトーシスの誘導との関係を薬物速度論的に解析する。カスパーゼ-3、8および9の阻害剤添加によるカスパーゼ-3, 9および8の活性化とアポトーシス誘導に対する阻害効果を調べそれぞれの経路の寄与を見積もる。③カスパーゼの最終ターゲットの一つに、ポリ(ADP)リボースポリメラーゼ (PARP)あり、この分解によって細胞がアポトーシスを起こすと考えられているが、アポトーシス進行にどの程度寄与しているかは明らかでない。今年度はPARPを同定しその分解とアポトーシス進行との関係を速度論的に解析する。
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