研究課題/領域番号 |
15K01352
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
吉田 徳幸 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子医薬部, 研究員 (00649387)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 核酸医薬品 / 肝毒性 / 相補配列依存的オフターゲット効果 / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「核酸医薬品による肝毒性発現の誘導機序を明らかにし、ヒトで肝毒性発現を予測可能な方法論を確立する。」ことである。具体的には、①核酸医薬品によるヒト肝毒性の誘導におけるKey分子を探索する。②Key分子を搭載したレポーター細胞を構築することで、ヒトでの肝毒性発現を予測可能なin vitro評価法を確立する。現在報告されている核酸医薬品の肝毒性は、核酸医薬品と細胞内蛋白との結合することが主要因と予測されている。しかし、実際には、配列依存的オフターゲット効果やToll様受容体(Toll like Receptor; TLR)等を介した自然免疫系の活性化など、最終的には他の様々な要因が重なり発症していると考えられる。そのため、特に肝毒性誘発のきっかけとなるようなKey分子を探索する場合、複合要因となりうる要素をできる限り回避した条件で検証をする必要があると考えられる。実際に、ここまでの肝毒性の研究において使用されているアンチセンスは、製薬企業の核酸医薬品開発でドロップアウトした候補品であり、相補配列依存的オフターゲット効果(経路1)および自然免疫系の活性化(経路2)に起因する毒性が排除されているわけではない。そこで本研究ではまず、細胞内蛋白との結合による毒性に特化した肝毒性評価方法を確立するため、「経路1および2による毒性発現を完全に排除したアンチセンス」を独自に抽出する。平成28年度は、経路1および経路2を回避したアンチセンスを選別した。これらの「経路1および経路2による毒性発現を完全に排除したアンチセンス」をマウスに投与し、マウスにおいて肝毒性を誘発する“毒性アンチセンス”と誘発しない“無毒性アンチセンス”に分類した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、「相補配列依存的オフターゲット効果(経路1)、および自然免疫系の活性化(経路2)を回避したアンチセンスの選別」、および選別したアンチセンスの中から「肝毒性を誘導するアンチセンスの選別」を実施した。前年に抽出した相補配列依存的オフターゲット効果を回避したアンチセンスについて、自然免疫系の活性化能を評価した。その際、アンチセンスは1本鎖DNAを基本構造とするため、1本鎖DNAを認識するTLR9の活性を指標とした。約200本弱の相補配列依存的オフターゲット効果を回避したアンチセンスを合成し、TLR9発現細胞に作用させた際のTLR9活性を評価したところ、今回解析したアンチセンスではいずれもTLR9の活性化は認められなかった。次に、抽出した経路1、経路2を回避したアンチセンスをマウスに投与し、肝毒性の誘導の有無を評価した。肝毒性については、肝毒性マーカーとして知られるALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ:主に肝臓に多く含まれる酵素で、肝毒性が起こると血中に漏出する)を指標に評価した。評価系を構築した後、順次「経路1、経路2を回避したアンチセンス」について肝毒性誘導の有無を評価し、平成28年度終了時において2本の肝毒性アンチセンスの選別を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においても、引き続き「相補配列依存的オフターゲット効果(経路1)、および自然免疫系の活性化(経路2)を回避し、且つ肝毒性を誘導するアンチセンスの選別」を実施し、マウスにおいて肝毒性を誘発する“毒性アンチセンス”と誘発しない“無毒性アンチセンス”に分類する。本研究の目的である「肝毒性の誘導におけるKey分子」の同定を達成するためには、複数本の肝毒性誘発アンチセンスが必要であると考えている。分類した“毒性アンチセンス”と誘発しない“無毒性アンチセンス”を用いて、マイクロアレイ解析等によりマウス肝臓における遺伝子発現変動を解析し、核酸医薬品による肝毒性の要因となるKey分子の同定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の計画していた検証事項は、結果として平成28年度研究費の最小限の範囲内で実施可能であったことから次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分も含めた次年度使用額については、最終年度に実施する「核酸医薬品による肝毒性の要因となるKey分子の同定」において実施するマイクロアレイ解析等の試薬類等に使用する。
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