生体腎移植医療において、ドナーの意思決定の自律性を担保するための具体的かつ実務に即した方策が求められている背景を受け、本研究では生体腎移植ドナーの意思決定過程へ働く因子を明らかにすることを目的とし、第一に文献レビューにて論点抽出および整理を行った。結果、ドナーへの明らかな圧力にとどまらず、ドナー自身の価値観や医療者側からの影響など、要素の多様性が見られた。IC(Informed Consent)の在り方が与える影響など、改善の余地のある要素が見出された一方、改善の是非そのものを議論すべき課題として含む要素もあった。それらは内容の類似性により12サブカテゴリーと上位4カテゴリー(【A. ドナーの持つ個性や価値観】、【B. 十分な理解ができないこと】、【C. ドナーの意思決定へ直接的に圧力をかける可能性】、【D. ドナーを取り巻く周辺の環境や状況】)と分類し、さらに、臨床の実務的視点に基づいて、“要素の起因する場所” および“要素の変動する余地”の2軸を用いた分析枠組みを加えた臨床アプローチの区分が示唆された。 続いて、ドナーの意思決定に重要な影響を与えうる医師をはじめとした医療従事者への面接調査を行った。レビューで抽出された論点からインタビューガイドを作成し、生体腎移植に関わる医療従事者15人を対象とした。結果、IC等の診察の際の環境に関した医療従事者内での認識の差異や、複数のドナー候補者が絞られる過程が医療従事者には不透明であるという事実、ドナーの自発意思の確認をすることへの戸惑い等の医療従事者自身が抱える葛藤や教育制度へのニーズも明らかとなった。 これらの結果から、解決すべき問題点・意思決定支援のニーズの可能性が示唆されるが、さらなる多角的な視野を包含するべく、生体腎移植ドナー経験者に対しての調査を計画している。最終的に、生体腎移植ドナーの意思決定に焦点を当てた支援ツールの作成へつなげていきたい。
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