研究課題/領域番号 |
15K01360
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小川 佳子 東北大学, 大学病院, 助教 (90733791)
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研究分担者 |
伊藤 修 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00361072)
森 信芳 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50463790)
上月 正博 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70234698)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食塩感受性高血圧 / Dahl食塩感受性ラット / 運動 / 腎保護作用 / 酸化ストレス / 一酸化窒素 |
研究実績の概要 |
食塩感受性高血圧とそれに伴う腎障害に対する長期的運動の治療的効果とその機序を明らかにするために、食塩負荷と同時に長期的な運動を行ったDahl食塩感受性(Dahl-S)ラットにおいて検討を行った。雄性Dahl-Sラットを、通常食塩食群(コントロール群)、通常食塩食+長期的運動群、高食塩食群、高食塩食+長期的運動群の4群に分け、長期的運動群には中等度の強度のトレッドミル運動を高食塩食の開始と同時に開始し8週間にわたり実施した。 高食塩食負荷により高食塩食負荷により著しい高血圧と蛋白尿を生じ、血漿クレアチニン値の増加やクレアチニンクリアランスの低下を認めた。長期的運動は血圧の上昇は抑制しなかったが、尿蛋白排泄量の増加は有意に抑制し血漿クレアチニン値を低下しクレアチニンクリアランスを改善する傾向が見られた。また、腎の組織学的検討では、高食塩食負荷は糸球体の硬化を生じたが、長期的運動はこれを抑制する傾向が認められた。さらに、高食塩食負荷は酸化ストレスマーカーである過酸化水素やチオバルビツール酸反応物質の尿中排泄量を著明に増加させたが、長期的運動はこれらの排泄を抑制した。また、長期的運動は一酸化窒素(NO)産生のマーカーである窒素酸化物の尿中排泄も増加させた。 以上の結果より、長期的運動はDahl-Sラットにおいて食塩負荷により生じた腎障害の進展を抑制することが明らかとなった。さらに、この長期的運動の腎保護作用は血圧とは独立した機序によるものであり、酸化ストレスやNO産生系が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高食塩食負荷や運動プロトコルなどの介入条件の設定に時間を要したため、解析の開始が予定よりやや遅れたが、長期的運動がDahl-Sラットにおいて腎保護作用を持ち、その作用機序は血圧とは独立した機序であり、酸化ストレスやNO系が関与している可能性を明らかにできた。現在は、長期的運動の腎保護作用の機序の詳細については検討を続けている。
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今後の研究の推進方策 |
Dahl-Sラットにおける長期的運動の腎保護作用は血圧とは独立した機序によるものであり、酸化ストレスやNO産生系が関与している可能性が明らかになったことから、今後は腎の酸化ストレスやNO産生系に関わる酵素の活性や蛋白あるいは遺伝子レベルでの発現について検討を進める予定である。 また、食塩感受性高血圧とそれに伴う腎障害に対する長期的運動の予防的効果についての検討も開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたよりも物品費や人件費が掛からなかったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については平成28年度分使用額と合わせて、ラットや実験物品の購入、旅費、その他に使用する予定である。
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