研究課題/領域番号 |
15K01366
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野崎 一徳 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (40379110)
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研究分担者 |
古郷 幹彦 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (20205371)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 鼻咽腔閉鎖機能 / 摩擦音 / 歯茎摩擦音 / 流体力学 / 音響学 / 空力音響学 / 口唇口蓋裂 / 発音 |
研究実績の概要 |
済生会松阪総合病院に設置された320列ADCT(東芝メディカル社)を用いて、被験音である「うすいみそしる」と発音した時の、秒間21ボリュームを用いて、数値流体シミュレーションを実施した。シミュレーションに用いた発音時の気道形状はDICOMデータから空気領域を抽出し、その結果をSTLデータとして出力した。抽出はデフォーマブル・レジストレーション(Elastix 4.7)により行った。STLデータはVxgen(Riken, Tokyo)に取り込み、ボクセルメッシュを生成し、数値流体計算ソフトウェアV-sphere::CBCを用いて気道内の流れの速度と圧力を算出した。圧力に関してはCT撮影時に圧力計咽頭内に挿入し、同時計測を行った結果、おおよそ数値計算の結果と傾向が一致した。ただし、喉頭付近の気道形状を含む形状に対してシミュレーションを実施したことにより、声帯が含まれ、その声帯の気流による変形を反映することが出来ていないため、一部傾向の不一致が発生した。次に、矢状断面における気道座標から代表的な寸法を計測し、単純な狭窄付き分岐管を構築した。この分岐管の流れを解析的に求めることにより、鼻咽腔閉鎖機能の発生危険度を推測する手法の開発に取り組んだ。以上の内容をIEEE BIBE2016(採択率35%)にて発表した。 乱流による影響を調査するため、上述の形状に対してOpenFOAMを用いてラージエディシミュレーション解析を行った。その結果を、WCCM2016にて発表した。 また筋機能計測のため、筋繊維走行を㈱ATRの協力を得て3テスラMRIを用いた拡散ディフュージョンテンソルの算出を行った。その結果、3mm立方で6軸ではオトガイ舌筋のみ筋繊維走行を確認することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鼻咽腔閉鎖機能に関する筋繊維走行情報取得に時間を要した。また、動的境界の表現に関して流体構造連成問題の解法についての検討と、その環境整備に時間を要している。現在、ベクター型スーパーコンピューター上で高効率に実行可能な「Arbitrary Lagrangian and Eularian Method」の実施に取り組む準備が整った。本年度、ALEを用いた実験を実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
複雑形状データを用いて、320列ADCTから得られた動的ボリュームデータを基に、ALE法による鼻咽腔閉鎖機能時の声道を流れる呼気の可視化に関する研究を進める。 単純分岐形状モデルを用いた理論解析と物理実験による検証を行い、鼻咽腔閉鎖機能として咽頭部で発揮されるべき物理現象に関する理解を進める。 複雑形状から得られた知見から、単純形状の軟口蓋閉鎖と舌の変形タイミングを抽出し、流れと音の分析を行う。これにより、軟口蓋閉鎖機能のタイミング、速度が発生する音の特性への影響を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機、共用計算機等に関して、大阪大学サイバーメディアセンターの若手研究支援を受けることが出来、一部、計算機コストを減少させることが出来たため。 MRIデータ撮影費や、舌運動計測器等へのアクセスルートが今年度ようやく構築できたことにより、次年度レンタル費用が発生することが見込まれたため。
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次年度使用額の使用計画 |
MRIデータ撮影費や、舌運動計測器等のレンタル費用として使用。 国際会議発表や論文校閲費、出版費に利用。 高性能メッシャー(計算格子構築ソフト)の購入。
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