脳梗塞発症後の生体機能をより詳細に評価し,脳梗塞に伴うADL低下やフレイル(虚弱)の促進因子・阻害因子,体重との関連を明らかにするため,急性期に入院を必要とした脳梗塞と一過性脳虚血発作を対象として,本研究に同意が得られ,本研究の臨床検査が可能な症例を登録することとした. ADL低下に関する生理検査所見の一つとして,モーションレコーダーによる運動機能評価を行うこととした.脳梗塞発症後に急性期病院入院中におけるADL低下の程度は個人差がきわめて大きいことより,汎用性と客観性,再現性の高い,かつ,簡便な指標が必要と考え,望ましい行動課題を試案し検討を進めた.しかし,急性期入院期間中も脳梗塞自体の症状変動や併存症,合併症に伴いADLの日差変動が大きく,指標とすべき行動課題を固定することがきわめて困難であった. 並行して,本院から平成27年度に登録されている240症例に関して,身長・体重,バイタルサイン,急性期臨床症状,危険因子の有無と関連検査値,各危険因子のコントロール状況,生理検査所見,画像検査所見,詳細な治療薬,入院当初の絶食期間や補液内容を集計し,後方視的な解析を合わせて進めた. 既に集計を済ませた72症例(男性45例,女性27例;平均年齢 76.4歳;平均BMI 22.3)においてステップ・ワイズ法による多変量解析を行った.脳梗塞重症度に関する検討では,入院時,退院時NIHSSは年齢と正の相関を示したが,BMIとの相関は認めなかった.日本肥満学会の判定基準に基づいて,低体重(BMI<18.5),普通体重(18.5≦BMI<25.0),肥満(25.0≦BMI)の3群に分けた検討において,入院時,退院時NIHSSは有意差を認めなかった.関連検査値や絶食期間との間にも一定の傾向は認められなかった.一部の症例による解析であり,さらなる集計,解析を継続していく.
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