研究課題
生物学的製剤投与中の関節リウマチに対する関節可動域訓練の効果を明らかにするために、疾患活動性マーカー、関節可動域の測定ならびに関節超音波検査を実施した。対象はA病院リウマチ・膠原病内科で生物学的製剤を投与中の関節リウマチ患者10名である。年齢は60.7±12.7歳で、男性2名、女性8名である。罹病期間は14.0±13.8年(0.3~40年)で、生物学的製剤はインフリキシマブが1名、エタネルセプトが6名で、トシリズマブが3名であった。治療前の圧痛関節数は5.0±4.2関節、腫脹関節数は4.2±3.9、疼痛VASは36.2±24.0、CRPは0.2±0.6、DAS-CRPは3.2±1.3、mHAQは0.3±0.4であった。関節可動域については、肩関節屈曲124.7±40.9°、伸展51.8±13.2°、肘関節屈曲141.4±5.6、伸展0、手関節掌屈46.7±9.4、背屈38.2±16.4、拇指MCP屈曲46.3±14.7、伸展2.3±19.1で、リーチ動作は7点中6.5±1.1点であった。握力は160.8±73.1mmHg、ピンチ力は2.9±1.7kgであった。これらの患者に、関節可動域訓練を12週間実施した。本研究はA病院倫理委員会にて承認を得て実施した。関節可動域訓練後、上肢の関節可動域の改善が認められたが、stageの進んだ進行例にはその効果は弱かった、圧痛関節数、腫脹関節数、疼痛VAS、CRP、DAS-CRPおよびmHAQについては有意な変化は認められなかった。関節超音波検査においても、滑膜肥厚やパワードプラシグナルに有意な変化は認められなかった。以上のことから、生物学的製剤投与中の関節リウマチ患者において関節可動域訓練は有効であり、疾患活動性を悪化させることなく安全に行うことができた。
2: おおむね順調に進展している
研究も概ね順調に進んでおり、関節リウマチに対する関節可動域訓練の効果について、疼痛関節痛、腫脹関節痛、疼痛VAS、mHAQ、CRP、DAS-CRPを測定するとともに、関節可動域、リーチ動作、握力、ピンチ力を計測した。さらに、超音波検査を実施することができた。今年度の日本リウマチ学会(JCR2017)において、生物学的製剤を投与した関節リウマチ患者の握力、ピンチ力に対する有効性について発表した。今後も研究成果については、リウマチならびにリハビリテーション関連の学会で発表するとともに、論文にまとめる予定である。
本年度は関節可動域訓練の関節リウマチに対する効果について検討を行った。その研究成果については、学会で発表し、論文として投稿を予定している。次年度は、生物学的製剤投与中の関節リウマチ患者にリウマチ体操を実施し、以下の項目について比較検討を行う。関節リウマチの活動性は圧痛関節数、腫脹関節数、被験者による痛みの評価(疼痛VAS)、mHAQならびにDAS-CRPによって評価する。筋力(握力、ピンチ力)、関節可動域を計測する。画像的評価のために、超音波検査を実施する。さらに、赤血球沈降速度やCRPとともに、TNF-α、IL-1、IL-6のサイトカインの血中濃度も検査する。
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Modern Rheumatology
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