研究実績の概要 |
実験動物の作製 老化促進マウス(SAMP1)を購入し、動物実験施設にて50週齢まで飼育し、定期的な行動解析(open-filed test や物体認識テスト、1時間の活動量計測など)と体重測定を続行した。運動させた高齢SAMP1群と運動を行わない高齢SAMP1群に分け8週後(58週齢)に屠殺し、ヒラメ筋、腓腹筋、長趾伸筋、前脛骨筋を採取し、通常の組織化学的染色とともに各種抗体を用いた検索を続行中である。また新しいシリーズとして、若年期からの運動が及ぼす影響について検討するため新たにSAMP1を購入し、飼育している。
患者生検筋の検索 筋疾患生検筋の凍結標本を用いて、type 2 筋線維萎縮を呈する症例について、COX 染色, SDH 染色, 電子伝達系complex I-Vの免疫染色、また増殖因子(GDF11ほか)や細胞外マトリックス(collagen VI, heparan sulfate proteoglycan, tenascin ほか)の免疫染色およびオートファジー関連因子(LC3, p62, Beclin 1, ATG4A ほか)の免疫染色を続行中である。また高齢者に多い封入体筋炎において比較的若年発症例と高齢発症例を比較することにより加齢による発症促進要因を明らかにする研究も進行中である。また、サルコペニアの比率が多いと報告されている大腿骨近位部骨折患者の手術中に得た中殿筋の病理学的検査を行い、著明なtype 2 筋線維萎縮やオートファジーの異常を示唆する酸フォスファターゼの高活性を伴う空胞変性を認めたため、症例を増やして検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
老化促進マウス(SAMP1)の老化にともなう筋、末梢神経、脊髄の観察 運動させた高齢SAMP1群と運動を行わない高齢SAMP1群に分けヒラメ筋、腓腹筋、長趾伸筋、前脛骨筋を採取し、通常の組織化学的染色とともに各種抗体を用いた検索を行い運動の効果を明らかにする。また新しいシリーズとして、若年期からの運動が及ぼす影響について検討するため新たにSAMP1を購入し、飼育しており、同様に効果を検討する。通常の組織化学的染色とともに各種抗体 (collagen VI, GDF11, PGC1-α, Beclin 1, FNDC5, mTOR,IGF-1, PI3K, atrogin-1, LC3, p62, ATG4A,電子伝達系complex I-Vなど)を用いた免疫組織化学的染色を行う。末梢神経、脊髄は通常の組織学的検索を行う。
患者生検筋の検索 高齢者に多い封入体筋炎の中に比較的若年で発症する症例があり、比較することにより加齢による発症促進要因を明らかにする。特にミトコンドリア異常、筋内微小血管の異常に注目して検索する。組織化学的染色、免疫組織科学的染色によりスクリーニングを行い、主病因の絞り込みができればRT-PCRを用いたmRNA発現異常を検索し、TNFα やp21 などの炎症および老化マーカーの遺伝子発現変化の検索も行い、サルコペニアの予防や治療に応用できる因子を解明する。
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