研究実績の概要 |
脊髄損傷ラットの摘出排尿筋のα,βメチレンATPによる収縮反応に対するTRPM8の作動薬であるメントールの影響を検討した。Sprague-Dawley系雌ラットを用い、イソフルラン吸入麻酔下に第9胸椎の椎弓切除を行い、脊髄を露出し、メスで脊髄を切離。切離断端間にスポンゼルを充填した後、筋肉及び皮膚を縫合した。術後は1日3~4回の用手圧迫排尿で尿路管理を行い、脊髄損傷作製の4~6週後に実験を行った。ラットを深麻酔下に断頭後、膀胱を摘出し、10×2 mmの排尿筋切片を作製。切片を、37℃に保温し95% O2 + 5% CO2で通気したKrebs-Ringer液で満たした10 ml organ bath内に懸垂し、アイソメトリックトランスデューサー(TB-651T ; 日本光電)に接続し、1 gの静止張力をかけた状態で平衡化させた。その後α,βメチレンATP 0.01 mMを25分間間隔で作用させ、安定した収縮反応が得られたところで、0.1 mM、0.3 mM、1mM のメントールを11分間作用させた際のα,βメチレンATPによる収縮反応の変化を調べた。その結果、0.1 mM、0.3 mM、1mM のメントールは、α,βメチレンATPによる収縮反応をそれぞれ13.1%、45.4%、97.6%抑制した。アセチルコリンと同様に膀胱における重要な神経伝達物質であり、病的な状態での膀胱において、より重要な役割を担うとされるATPによる膀胱平滑筋収縮に対し、メントールは、先に我々が報告した正常ラットでの結果と同様に強い抑制作用を示すことが明らかになった。
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