研究課題
ラットにくしゃみをさせる腹圧性尿失禁モデルにおいて、脊髄オピオイドu受容体を活性化させるトラマドールを静脈内投与したところ、尿禁制反射が増強すること、その作用は選択的u受容体遮断薬であるcyprodimeの髄腔内投与で遮断されることを解明した。したがって、脊髄オピオイドu受容体は尿失禁を改善させる創薬開発のターゲットになる可能性が指摘された。臨床においては、難治性尿失禁、膀胱痛の患者に磁気刺激装置(TMU-1100、日本光電)を3か月使用したところ、過活動膀胱スコア、尿失禁症状・QOL評価質問票ICIQ-SF(International Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form)のスコアが改善した。しかし、その効果持続は6か月程度で、MRI画像上で骨盤底筋の形態学的変化は誘導できなかった。以上より、難治性尿失禁、頻尿の新たな薬物標的として脊髄のオピオイドu受容体が示唆された。一方で、磁気刺激装置によるneuromodulation効果は限定的で、今後は長期の効果が課題として挙げられた。また、磁気刺激装置によるneuromodulation効果が、脊髄のオピオイド受容体を介したものかはもう一つの大きなテーマと考えている。今のところ、研究の進捗状況は順調だが、最終目標の3割程度と考えている。
2: おおむね順調に進展している
基礎、臨床研究ともに順調に成果はでている。その成果の一部を2015年国際尿禁制学会(モントリオール)において報告した。
1.脊髄uオピオイド受容体の選択的作用をアゴニスト、アンタゴニストを用いてさらに解明する。2.磁気刺激装置の適応患者を難治性尿失禁、頻尿といった過活動膀胱ばかりではなく、特殊な病態としての間質性膀胱炎にも広げ、neuromodulation効果をさらに解明する。3.基礎研究での脊髄オピオイド受容体、臨床研究でのneuromodulation効果の関わりを詳細に検討する。
物品PowerLabの購入を次年度に持ち越したため。
新年度に計画を練り直し、必要物品の購入を今年度前半に行う予定である。また、病理検査の追加検査の必要性が生じたため、消耗品の購入を計上よりも多く行う予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
Prostate Cancer Prostatic Dis.
巻: 19 ページ: 57-62.
10.1038/pcan.2015.50.
J Urol
巻: 194 ページ: 842-7.
10.1016/j.juro.2015.03.091.
Br J Nutr.
巻: 114 ページ: 84-90.
10.1017/S0007114515001439.
日本老年泌尿器科学会雑誌.
巻: 28 ページ: 41.
西日泌尿器.
巻: 77 ページ: 446-50.