研究課題/領域番号 |
15K01377
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
宮里 実 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70301398)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脊髄 / オピオイド受容体 / 磁気刺激 / neuromodulation |
研究実績の概要 |
尿失禁を有する過活動膀胱患者に対して、磁気刺激装置(TMU-1100、日本光電)を1回25分を1週間に2回、3ヶ月間介入したところ、過活動膀胱スコア、尿失禁症状・QOL評価質問票ICIQ-SFで有意な改善が見られ、薬物治療の減少につながった。その機序として、骨盤底筋または外尿道括約筋のneuromodulation、リハビリ効果によるものであるとの仮説をたて治療前後で骨盤底のMRI評価を行ったが、有意な所見が得られなかった。それらの結果を、「尿失禁患者を対象とした磁気刺激治療の初期経験」というタイトルで女性健康科科学研究会誌. 5 (1):44-48, 2016.に報告した。 基礎的裏付けを得るため、1)ラットにくしゃみを誘発して尿道マイクロチップで尿道禁制反射を測定するモデル、2)尿が漏れるリークポイン圧を測定するモデルを用いて、トラマドール(オピオイドu受容体作動薬)、またはシプロダイム(オピオイドu受容体遮断薬)の投与実験を行った。結果、トラマドールの静脈内投与は1)2)のモデルともに尿禁制反射を増強し、その効果はシプロダイムの脊髄内投与で遮断された。したがって、尿禁制反射の増強効果は脊髄オピオイドu受容体の作用を介するものであることが示唆された。 以上より、磁気刺激による過活動膀胱の改善は、骨盤底の形態学変化というよりはむしろneuromodulation効果が大きいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトでの介入研究において、尿失禁を有する過活動膀胱患者に磁気刺激装置が有用であることは検証できた。しかし、治療前後でMRI骨盤底の形態学的有意な変化が得られなかった。一方、動物実験において、脊髄内オピオイドu受容体を刺激することによって尿禁制反射の増強効果が得られた。このことは、磁気刺激による過活動膀胱の改善は、骨盤底の形態学変化というよりはむしろneuromodulation効果が大きいことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
過活動膀胱への磁気刺激改善効果機序として、MRI骨盤底の変化がみられなかった理由として、3か月という期間が短いという可能性を考えて、磁気刺激治療を6か月に延長して評価することを予定している。 基礎実験において、neuromodulationの機序として脊髄オピオイドu受容体の関与が示唆された。今後は、脊髄オピオイドu受容体だけではなく、尿禁制反射に影響するノルアドレナリン、セロトニンといったその他の神経伝達物質との相互作用について調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、初年度に購入予定であった機器PowerLab、針電極の購入が、これまで既存した機器を用いた薬理実験を優先したため必要としなかった。平成29年度は、外尿道括約筋活動を記録するため必要となる。最終年度になる平成29年度購入予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
PowerLab、針電極の購入を行う。
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