研究実績の概要 |
尿失禁を有する過活動膀胱患者に対して、磁気刺激装置(TMU-1100、日本光電)を1回25分を1週間に2回、3ヶ月間介入したところ、過活動膀胱スコア、尿失禁症状・QOL評価質問票ICIQ-SFで有意な改善が見られ、薬物治療の減少につながった。その機序として、骨盤底筋または外尿道括約筋のneuromodulation、リハビリ効果によるものであるとの仮説をたて治療前後で骨盤底のMRI評価を行ったが、有意な所見が得られなかった。それらの結果を、「尿失禁患者を対象とした磁気刺激治療の初期経験」というタイトルで女性健康科科学研究会誌. 5 (1):44-48, 2016.に報告した。 基礎的裏付けを得るため、1)ラットにくしゃみを誘発して尿道マイクロチップで尿道禁制反射を測定するモデル、2)尿が漏れるリークポイン圧を測定するモデルを用いて、トラマドール(オピオイドu受容体作動薬)、またはシプロダイム(オピオイドu受容体遮断薬 )の投与実験を行った。結果、トラマドールの静脈内投与は1)2)のモデルともに尿禁制反射を増強し、その効果はシプロダイムの脊髄内投与で遮断された。さらに、選択的オピオイドμ受容体作動薬 [D-Ala2, NMe-Phe4, Gly-ol5]-enkephalin(DAMGO)の脊髄髄腔内、または静脈内投与は1)を増強した。したがって、尿禁制反射の増強効果は脊髄オピオイドu受容体の作用を介するものであることが示唆された。以上より、磁気刺激による過活動膀胱の改善は、骨盤底の形態学変化というよりはむしろneuromodulation効果が大きいことが示唆された。
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