研究課題/領域番号 |
15K01380
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
松田 剛 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70422376)
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研究分担者 |
山脇 正永 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30302855)
山根 由起子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80745282)
檀 一平太 中央大学, 理工学部, 教授 (20399380)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 嚥下 / automatic imitation / 筋電 / 嚥下音 |
研究実績の概要 |
本年度は「研究項目1:嚥下運動に関するAutomatic imitation の検証」に関連する実験として、嚥下運動のAutimatic imitationの存在を行動レベルと筋活動レベルで確認するための実験を実施した。もし嚥下運動のAutomatic imitationが存在するならば、他者の嚥下運動を見たり、その音を聞いたりすることで、自身の嚥下運動が促進されるはずである。そこで健常成人を対象に、他者の嚥下運動を見ているときや、他者の嚥下音を聞いているときの嚥下反応時間(合図が表示されてから嚥下が始まるまでの時間)と嚥下音を、筋電計および咽喉マイクを用いて測定した。筋電計は嚥下関連筋である舌骨上筋群と舌骨下筋群上に、咽喉マイクは喉頭隆起の4~5cm横に装着した。刺激としては男性の嚥下運動(喉頭隆起の動きを横から撮影したもの)の動画と静止画、およびそのときの嚥下音を用いた。 16名(男性8名, 女性8名, 平均23.1歳)の成人を測定した結果、他者の嚥下音を聞いたときは嚥下反応時間が早くなり、さらに被験者自身の嚥下音の音量が大きくなることが明らかとなった。この結果は、他者の嚥下音を「聞くこと」によって自身の嚥下の開始が円滑になり、さらにボーラス(食塊)の移動もより効率的に行われた可能性を示唆している。一方で他者の嚥下運動を「見ること」による顕著な効果は観察されなかった。我々が日常生活において他者の喉の動きを直視する機会はあまりなく、むしろ嚥下音を聞く機会の方が多いため、聴覚刺激の方が効果的に働いたのかもしれない。ただし嚥下運動の動画と音声を同時に提示したときは、静止画と音声を提示したときよりも舌骨上筋群の活動が小さくなるという有意傾向が見られたため、嚥下運動を「見ること」による効果が存在する可能性は残されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
医局の移転に伴い実験室の再設営が必要となったため、当初の予定よりも若干の遅れは見られるものの、本年度の目標であった嚥下運動のAutomatic imitationを測定するための環境と実験手続きの構築、および行動レベルでの存在の確認はおおむね達成された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果により嚥下運動のAutomatic imitationが発生している可能性が示唆されたため、今後はより効果的に嚥下運動を促進する音声や映像について検討する。具体的には嚥下音とそれ以外の音声との比較や、連続嚥下の映像や音声を用いた測定などを実施する予定である。その結果得られた嚥下運動のAutomatic imitationに効果的な実験刺激を用い、まずは健常者を対象にNIRSによる脳活動測定を進め、嚥下運動のAutomatic imitationの発生機序を解明する。そして実験手続きや解析手法を確立したのち、嚥下障害患者を対象とした同様の実験を行い、リハビリテーションとしてのAutomatic imitationの効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は関連学会の多くが関西圏で開催されたため、当初の見込みよりも旅費が低く抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分は本研究課題に関する打合せのための旅費、および実験器具の購入に使用する。
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