研究実績の概要 |
心血管病の最大の原因の1つである糖尿病において認知機能は早期から低下し、糖尿病患者のアルツハイマー型認知症の発症リスクは約2倍、血管性認知症は約3倍になると報告されている。また、心不全患者の約半数に認知機能低下を認め、心不全疾病管理におけるセルフケア能力の低下が心不全の度重なる再入院の一因と考えられている。さらに、糖尿病と心不全に共通する病態として血管内皮機能低下と微小循環不全があり、全身の骨格筋量の低下が生じサルコペニアを来たしやすい状態となる。そのため、糖尿病と心不全の合併は高齢心血管病患者のフレイル状態を促進し、歩行能力などの身体機能を低下させ、さらに病態悪化を招く悪循環が生じる。今回、申請者らは、高齢心血管病患者において血管内皮機能低下に伴って認知機能が低下していることを明らかにした(Fujiyoshi K, Yamaoka-Tojo M, et al. Int Heart J. 2018;59:1034-1040)。 運動療法を中心とした包括的心臓リハビリテーション(以下、心リハ)は、心血管患者に対して身体的効果、精神的効果、QOLに及ぼす効果、二次予防効果が数多く報告され、国内外のガイドラインにもそのエビデンスが明記されている。申請者らは、通常の運動療法が困難なフレイル状態にある高齢心血管病患者においても安全に実施可能な加速度トレーニングによって、血管内皮機能や自律神経機能を改善するとともに、微小循環改善効果が得られる運動プログラムを開発した(Aoyama A, Yamaoka-Tojo M, et al. Int Heart J. in press)。さらに認知機能が低下している心不全患者に対し、心臓リハビリテーションにより血管内皮機能を改善し、認知機能低下を改善することを明らかにした(投稿準備中)。
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