研究課題/領域番号 |
15K01390
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
鈴木 恵子 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (40286381)
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研究分担者 |
岡本 牧人 北里大学, 医学部, 名誉教授 (40129234)
佐野 肇 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80205997)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 要介護高齢者 / 難聴 / 認知症 / 介護老人保健施設 / 聴覚評価 / 補聴器 / 言語聴覚士 / 多職種間連携 |
研究実績の概要 |
本年度は、難聴をもつ要介護高齢者の補聴器装用効果を明らかにすることを目指した。 対象:昨年度の介護老人保健施設(以下老健)入所者86例の聴覚評価で難聴を認めた(良聴耳25dB以上)56例中、耳垢栓塞等を除く48例を聴力と認知症の程度(MMSE得点)を層別項目としてランダム化し24例を対象とした(年齢84±7.5歳,MMSE16±7.5点,聴力47±13dB)。 方法:耳かけ型デジタル補聴器を試聴器とし、良聴耳40dB未満は悪聴耳、40dB以上は良聴耳を装用耳とした。補聴外来担当の耳鼻咽喉科医と言語聴覚士(以下病院ST)が適合を行い、老健所属のST(以下老健ST)が介護職員と共に日常の装用支援を行った。職員への事前講習、左右色違いのイヤモールド、落下防止紐、定時着脱と装用記録、定時電池交換等、試聴環境整備に配慮した。期間は開始から4ヶ月とした。 結果:装用状況は、終日装用日(6時間以上)の割合が全装用日の80%以上あった安定装用5例、装用拒否5例、中間14例に分類された。3群間に年齢、性別、聴力の差はなかった。離床時間は安定装用群で中間群より有意に長く,また装用拒否群を除く19例のMMSE得点と終日装用日数の割合の間に中程度の正の相関を認めた。補聴開始時,聞こえ方の変化を18例が自覚した。自覚群のMMSE得点は非自覚群に比し有意に高かった。中間群は装用時間の推移により、延長5例、変動3例、低迷3例、中断3例に分類された。装用期間終了後のMMSE得点は、対照群24例との比較において、対象全例でも、装用拒否群を除く19例でも、有意な差を認めなかった。 考察:認知症を伴う老健入所者でも、介入法の工夫によって補聴器を日常的に使い得る可能性が示唆された。安定装用の阻害要因として体調低下、重度認知症、高次脳機能障害の諸症状が推察された。4ヶ月間の補聴器装用によるMMSE得点の変化は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画した介護老人保健施設入所中の要介護者を対象とした聴覚評価、補聴器装用効果の評価については、すでに基本的な研究を終わり、現在、4例の長期経過例の経過を追っている段階である。補聴器を施設内で効果的に活用し装用を継続する4例の経過は、本研究の目的の一つである補聴器装用効果に関する貴重な資料を提供することが期待され、慎重に観察を継続する所存である。この資料の一部については、平成29年度の日本言語聴覚学会で施設STが報告を行う。 これに加え、要介護高齢者の補聴ニーズと補聴器装用効果の研究として、さらに実質的な成果が期待できる在宅の要介護者に関する研究を、実施施設の協力で開始することができ、現在進行中である。具体的には、同施設の通所リハビリテーション部門に通所中の在宅要介護高齢者を対象とした聴覚評価および補聴器試聴の実施である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで実施してきた介護老人保健施設の入所者を対象とした研究に加え、同施設の通所リハビリテーション部門の通所者、つまり在宅の要介護高齢者を対象として同様の介入を行うことで、要介護高齢者の補聴ニーズと補聴器装用効果を明らかにするという本研究の目的に照らして、さらに有用な資料が得られると期待できる。 最終年度の成果として、これら全ての結果を総合して、今後増加の一途をたどることが予想される高齢難聴に対する地域リハビリテーションの観点からの介入法についても、示唆を得たいと考える。
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