研究課題/領域番号 |
15K01391
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
水野 勝広 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (50327649)
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研究分担者 |
春日 翔子 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 助教 (70632529)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 半側空間無視 / プリズム適応 / functinal connectivity / 視覚運動協調 |
研究実績の概要 |
本年度は健常者でのプリズム適応課題前後の安静時機能結合(resting-state functional connectivity: rsFC) の解析をさらに進め、左右の腹側注意ネットワーク、背側注意ネットワーク、小脳などの間のrsFCの変化に着目した。結果、左右の大脳半球間、右大脳半球内、左右の小脳間などにrsFCの変化を見出した。特に、右半球内の腹側ー背側注意ネットワークの間では、プリズム適応が消失した後もrsFCの変化が残存している部位もあり、脳内の変化が長時間保持される可能性が示唆された。これは、半側空間無視患者においてプリズム適応療法後、長期間の改善が認められることと矛盾せず、今回見出された機能結合部位を中心に半側空間無視患者でのrsFCの解析を進めることにより、今後のプリズム適応療法のメカニズムの解明に役立つ可能性があると考えられる。 また、半側空間無視患者5名において7-10日間のプリズム適応療法を施行し、臨床指標の改善、eye-trackerを用いた視線解析、タッチパネルを用いた視覚探索課題の施行戦略の変化、rsFCの撮像などを行った。結果、プリズム適応療法により、従来報告されている臨床指標の改善のみならず、日常生活活動中の注視範囲の改善、視覚探索の効化など、従来報告されていない臨床指標の変化の背景となる行動変化を確認できた。 以上の成果の一部を、第50回日本作業療法学会、第46回日本臨床神経生理学会学術大会、第57回日本神経学会学術大会などで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの研究で、健常者において短時間のプリズム適応により、脳内の機能結合が変化し、一部は長期間持続することが示唆された。この結果は半側空間無視に対するプリズム適応の効果メカニズムとして、脳内ネットワークの活性化と結合変化が関与するという仮説と矛盾しないものである。 また、半側空間無視患者に対するプリズム適応療法も症例数を増やしており、また、eye trackerやタッチパネルなど新たな評価システムも導入され、より詳細な効果検証が可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き健常者でのrsFC撮像、半側空間無視患者に対するプリズム適応療法の症例数を進める。来年度には既に国内、国外の学会での発表を複数予定しており、論文化に向けた準備も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の値引き、出張時の宿泊費が限度額より安価であったため、少額の未使用金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入に充てる。
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