健常者20名において、新しい系でプリズム適応課題前、直後、及び1時間後にfMRIを撮像し、安静時機能結合(resting-state functional connectivity: rsFC)の変化を検証した。その結果、プリズム結合課題後に右大脳半球の頭頂間溝と前頭眼野の間のrsFCの減少、右大脳半球の前帯状皮質と前頭眼野のrsFCの増加を認めた。この変化はプリズム適応後1時間後には消失していた。頭頂間溝と前頭眼野はともに背側注意経路に属しており、前帯状皮質は背側注意経路の機能の調整を行うことが知られており、プリズム適応は帯状皮質を介して背側注意経路の機能を変化させる可能性が示唆された。先行研究では半側空間無視の発症には腹側注意経路の器質的損傷が関与しており、背側注意経路の機能的結合性の異常は発症初期に見られるが、時間が経過すると回復することが報告されており、器質的に保たれている背側注意経路の機能が無視の回復に関与すると考えられる。今回、健常者において短時間のプリズム適応により背側注意経路のrsFCを変化させ得ることが確認され、プリズム適応による半側空間無視改善メカニズムの理解や新たな半側空間無視治療法の開発に役立つと考えられる。 また、発症後6カ月以内の半側空間無視患者3名に対し、7-10日間のプリズム適応療法を行い、治療前後にfMRIを測定し、rsFCの変化を検証するとともに、我々が開発したタッチパネルを利用した無視の検査法や行動評価により評価し、無視の改善と機能結合の変化の関係を検証した。 以上の成果の一部を国内学会、国際学会で発表した。
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