「1.実運動による疼痛緩和(EIH)」と「2.運動イメージによる疼痛緩和(MIIH)」について検証した。 1.EIHについて (1)single/multiple-bouts,regular exercise(1~3週,全6日),(2)低~高強度運動,(3)長時間運動による鎮痛と気分・自律神経変化について定量的感覚検査(QST)(特に時間的加重(TS))を加え検討した。(1)Single-boutでは鎮痛効果は運動直後のみである一方,regular-boutでは慢性痛有訴者でも2週目より痛覚感受性低下,3週目でTS減衰の持続効果があったことから,regular exerciseは中枢性疼痛修飾機能を改善し,3週間以上の運動期間を要すること,(2)いずれの運動強度でもEIHと気分改善を認め,特に中強度で有効で,高強度で身体疲労感が強くなると中枢感作が抑制されにくかったことから,強すぎず弱すぎない快適強度の運動が有効であること,(3)2時間の長時間運動では,気分高揚と交感神経活動が運動開始1時間後にかけて増大した後減衰に転じ,その後鎮静と副交感神経活動が増大を示したことから,長すぎる運動は鎮痛には効果がないものの,気分改善や自律神経調節には最適な時間設定により奏効する可能性があることが示唆された。 2.MIIHについて 歩行の実運動と筋感覚的運動イメージ(MI)による鎮痛について定性的・定量的イメージ能力評価とともに検討した。MIは実運動同様に痛覚感受性低下,TS減衰し,イメージ能力とMI鎮痛に負の相関があったことから,MIは中枢性疼痛修飾系を介した鎮痛をもたらし,その効果にイメージ能力が影響し,疼痛修飾機能変調が疑われる慢性痛有訴者ではMIIH効果が病態によって異なる可能性が示唆された。
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