研究課題/領域番号 |
15K01400
|
研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
若林 毅俊 関西医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90302421)
|
研究分担者 |
小阪 淳 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (40243216)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 網膜神経節細胞 / 軸索再生 |
研究実績の概要 |
視神経は網膜神経節細胞(RGC)の軸索であり、中枢神経の一種である。視神経が障害を受けると、RGCの99%以上が細胞死に陥り、視機能は再生しない。しかし、視神経傷害部に末梢神経片を吻合移植すると、RGCの一部は軸索を再生することが知られている。しかし、その再生数は少なく、また、視覚機能再建に十分な長さの軸索を再生することは困難である。代表者が開発した視神経切断端への血管柄付き末梢神経移植術は、神経軸索の再伸長を促進し、視覚中枢にまで到達する長さの軸索再生が可能である。また、髄鞘の再形成が促進されるため、高度な機能回復が期待できるものの、軸索再生を阻む移植部の瘢痕形成など、手法に改善の余地がある。そこで、今年度では、視神経切断がRGCの生存に与える影響と移植方法の再検討ならびに、視神経傷害による組織学的な変化を明らかにすることを目指した。視神経が傷害されると、RGCが細胞死に陥るが、細胞死に至る過程で、非特異的に標識されるRGCが認められた。前年度のこの問題は、灌流液に加えたピクリン酸が影響した可能性が示唆され、これを除去することで、非特異的反応は軽減された。ついで、anti-chondroitin sulfate, Anti-Myelin basic protein(MBP)などが移植吻合部の組織学的検討に有用なことを明らかにした。損傷部位では脱髄にともないMBPの発現が低下する一方で、網膜の神経節細胞層におけるMBPの発現が上昇していた。ミエリン鞘に局在するMBPは、本来網膜内には局在していないにもかかわらず、損傷後に発現上昇したことから、どの細胞に発現したのか検討中である。また、RGC細胞膜に何らかの変化が起こる可能性が示唆されることから、質量顕微鏡を用いて網膜内の脂質分布を確認した。その結果、損傷前後で網膜内の脂質に違いがみられることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
視神経傷害後急性期のRGC同定について、新たに検討課題が生じたことで、前年度に進行に遅れが生じた影響で、今年度も遅れが認められた。ただし、評価方法には、ある程度進展が認められた。また、視神経損傷によって、RGCの細胞膜構成成分が変わってくる可能性が示唆された。このことは、損傷部位の瘢痕形成およびそれによるRGCの軸索再生を検討するうえで、細胞膜の変化についても、あらかじめ検討する必要があることを示唆する。全体としての進行は遅くなるものの、新しい研究領域へと発展する可能性もあり、視神経損傷後の視神経・網膜の細胞膜レベルでの変化について、さらに詳細な検討が必要と考えた。このため、研究の進捗状況に影響が出た。
|
今後の研究の推進方策 |
研究を進める過程において、当初想定していなかった新たな研究成果が得られてきた。これらについても併せて検討することが、当初の計画を遂行する上でも必須と思われる。移植のみならず視神経損傷時においても、この点についてさらに検討する。研究計画の推進に多少影響する可能性は考えられる。瘢痕形成と細胞膜の変化については、すでに、これを専門とする外部の研究者の意見も参考にしているが、場合によっては、研究協力者として、一層の協力を仰ぐことも考慮する。以上を通じて、研究の推進を図る。用いる抗体については、既に検討したものに加えて、更に数種類は検討を継続する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度、いくつかの検討課題が生じ、それに対する実験を行っていた関係で、研究の進行に遅れがみられた。今年度もこの影響を受け、その検討を続けた。そのため、研究全般の遅れが生じ、その結果、使用額が計画とは異なった。
|
次年度使用額の使用計画 |
抗体選定もある程度済み、評価方法も定まってきた。損傷部位に生じる瘢痕のみならず、傷害そのものが網膜自体に与える影響が大きく、この点についても解明する必要が出てきており、その解析のため、必要な実験を行う。そのために必要な物品購入に充当する。共同研究者との連絡も密にする。
|