研究課題
視神経は網膜神経節細胞(RGC)の軸索であり、中枢神経の一種である。視神経が障害を受けると、RGCの99%以上が細胞死に陥り、視機能は再生しない。一方、視神経傷害部に末梢神経片を吻合移植するとRGCの一部は軸索を再生することが知られている。しかしその再生数は少ない。代表者が開発した視神経切断端への血管柄付き末梢神経移植術は、髄鞘の再形成と神経軸索の再伸長が促進され、長い軸索の再生が可能である。この手法の有用性を明らかにするため研究を行ってきた。これまでの研究で、視神経傷害後の早期から網膜の脂質構成に変化が起こっていることが分かってきた。近年、視神経傷害後のRGCの軸索再生への脂質の関与が示唆されてきていることから、網膜における脂質構成の変化が細胞死・再生に関与していると考えられる。そこで、視神経傷害後早期における網膜の脂質の変化を明らかにすることがRGCの細胞死抑制さらには軸索再生へとつながると考え、質量顕微鏡を用いて視神経傷害前後での網膜内の脂質分布の変化を調べた。神経細胞体に豊富に含まれるホスファチジルイノシトールは、正常網膜では神経節細胞層・内顆粒層・外顆粒層に発現がみられた。一方、視神経損傷網膜3日目には、外顆粒層での発現が著明に低下した。これに対し、フォスファチジルセリン群は、その種類により正常網膜での発現に差があり、視神経傷害前後で発現変化も異なった。さらに、ドコサヘキサエン酸を構成脂質成分とするホスファチジルエタノールアミンは、視神経傷害によって網膜全層にわたって発現が上昇した。以上より、視神経の傷害は軸索を投射しているRGCだけでなく、網膜全層にわたって分子レベルでの変化をもたらすことで、RGCの細胞死や軸索再生に影響を及ぼしていることが示唆された。
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