「健康長寿」を目指す際、重要な要素として「食事」がある。しかしながら、高齢者の「食事」は、咀嚼・嚥下機能が低下し、誤嚥やそれによる窒息、あるいは誤嚥物に付着した菌による肺炎の発症など、深刻なリスクが存在する。このような背景から、①摂食・嚥下機能の正確な診断・評価の方法、②これに対応する食事の形態や物性に関する基準の確立、が強く求められている。本研究では特に上記①に関して、テストピースを用いて舌の立体認知能・運動能を測定・定量化することにより、高齢者の口腔咽頭機能について簡便かつ客観的に評価し、本法を利用した新しい診断方法への臨床応用を展開するための基盤となる研究を行うことを目的としている。一昨年と昨年、健常成人の基本的な舌の状態(舌所見、舌圧、舌表面湿潤度、唾液分泌能、味覚テスト)とテストピースを用いた舌の立体認知能について調べ、それぞれの相関について解析した結果、舌の状態に関する各調査項目と舌の立体認知能との間に関連は認められなかった。また、舌の状態に関する各調査項目間での関連についても調べたが、各項目間に有意な関連は認められなかった。したがって、健常成人において、舌立体認知能を含む舌に関する項目はそれぞれ独立した要素であることが考えられた。さらに、同様の結果が高齢者においても得られた。本年度はまず様々なライフステージで舌立体認知能がどのように変化するのかについて調査を行った。そしてさらに、食事介入することで舌立体認知能が改善するのかについても検討した。
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