研究課題/領域番号 |
15K01406
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研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
飯山 準一 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (00398299)
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研究分担者 |
岩下 佳弘 熊本保健科学大学, 保健科学部, 講師 (70623510)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 全身温熱の反復 / 非薬物療法 / 腎不全 / 内部障害のリハビリテーション |
研究実績の概要 |
我々は5/6腎摘除(Nx)マウスを用いて、全身へのマイルドな温熱刺激の反復(repeated mild thermal stimulation, MTS)がNxによる血清クレアチニン上昇やアルブミン尿増加を軽減し、作用機序のひとつに熱ショックタンパク質27のリン酸化亢進を伴うアポトーシスの抑制、酸化ストレスの軽減が寄与することを明らかにしてきた。今年度はNxによって誘導される炎症性サイトカインに対するMTSの効果について検討した。 40匹の129X1/SvJマウスを偽手術+室温(Sh+RT群;n=7)、偽手術+MTS(Sh+MTS群;n=7)、5/6腎摘+室温(Nx+RT群;n=13)、5/6腎摘+MTS(Nx+MTS群;n=13)の4群に分けた後、1日1回(39℃15分+35℃20分)、週5日、4週間MTSあるいは室温(RT)加療を行った。残存腎におけるpro-inflammatory やanti-inflammatory cytokine mRNAの発現をreal time PCR法を用いて確認した。 MTSはNxによる血清クレアチニン上昇、アルブミン尿増を有意に軽減した(P < 0.01-0.001)。NxによりTNF、およびIL-6 mRNAの有意な発現増加(P < 0.05-0.001)が観察されたのに対し、MTSによりTNFの有意な軽減が認められた(P < 0.01)。一方、IL -10 mRNAにおいては、Nx+MTS群で有意な増加が認められた(P < 0.01)。IL -1βやMCP1mRNA発現に対するNxやMTSの影響は認められなかった。 MTSは腎組織でのTNF発現を軽減させる可能性が示唆された。Nx+MTS群での抗炎症性サイトカインとして認知されているIL -10 の増加がTNFの発現抑制に寄与したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年は熊本地震の影響があり、約半年に渡り研究室を利用できない状況だったが、それまでの結果をまとめ、投稿した論文が採択された(Mild systemic thermal therapy ameliorates renal dysfunction in a rodent model of chronic kidney disease. Am J Physiol Renal Physiol 310: F1206-1215, 2016.)。本論文は採用月の雑誌のselected articleに選ばれ、certificationをいただいた。また一昨年日本温泉気候物理医学会雑誌に投稿した論文(5/6腎摘除マウスへの全身温熱刺激による腎保護作用の可能性)が優秀論文賞を受賞した。このように結果に対する高い評価が得られており、全体としては概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
全身温熱が慢性腎臓病モデルで、蛋白尿を減じクレアチニン上昇を抑制するというプライマリーな結果に引き続き、炎症性サイトカインの抑制が示唆されることもわかってきた。今後は、温熱受容体であるTRPチャネルを介した細胞内分子メカニズムの解明が新たな課題となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は熊本地震のために約半年に渡り研究室が使用できない状況だったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究室の再建は既に完了しており、稼働している状況である。今後さらに研究を加速し、全身温熱の反復が温熱受容体を介して細胞内へどのようなステップでシグナル伝達が行われるのか、分子メカニズム解明を急ぎたい。そのため、引き続き細胞内のmRNAおよび蛋白の動きを追っていく予定である。
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