チャネルロドプシン(ChR2)ならびにハロロドプシン(NpHR)を皮質脊髄路に特異的に発現するトランスジェニックラット作出のために、マウスで皮質脊髄路特異的に発現しているcrym遺伝子のプロモータ領域を含むbacライブラリーを選定し、そのbacクローンのcrym遺伝子開始コドンに合わせてChR2/GFPならびにNpHR/mCherry遺伝子を挿入し、トランスジェニックラット作出用のbacコンストラクトを構築した。それらをラット受精卵に顕微注入し、トランスジェニック陽性個体をChR2とNpHRの特定領域のみ増幅するプライマーを用いてpcr法により選別を行い、それぞれ1系統と3系統樹立した。しかし、それらからはいずれも緑色ならびに赤色蛍光を確認できなかった。この理由としてマウスとラットではcrymの発現が相同でない可能性や、マウスbacクローンでは網羅できない領域に皮質脊髄路の発現調節領域がある可能性などが考えられる。また、クローンがゲノムに挿入された領域に強力な転写抑制機構が働いている可能性も否定できない。それぞれの蛍光色素の抗体染色で信号を検出できなかったことから、タンパクの発現自体が弱く蛍光を検出できなかった可能性は低いと考えられた。 一方、脊損患者のリハ効果を判定するために日常生活動作評価法であるSCIMを用いて予後予測ができるかを検討した。その結果、SCIM の継時的変化は対数関数モデルで正確に予測できることが明らかとなった。また、SCIM総点数を説明変数に、各項目点数を目的変数に順序ロジスティック解析を行い、あるSCIM総点数が与えられた時の各項目の点数分布確率を求めることができた。これを用いると各項目ごとの難易度が推定できる。上記の二つの方法を合わせることで、任意の時点でのSCIM総点数とそこから導き出される各項目の点数を予測することができると期待される。
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