研究課題/領域番号 |
15K01409
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齊藤 展士 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (60301917)
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研究分担者 |
笠原 敏史 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (10312422)
山中 正紀 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (40166757)
前島 洋 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (60314746)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 姿勢学習 / 運動学習 / 姿勢応答 / 外乱刺激 |
研究実績の概要 |
近年,リハビリテーション場面だけでなく,高齢化社会においても運動機能の改善は重要な課題となっている.連続して上肢運動を行うと運動学習により運動機能が改善することはよく知られている.しかしながら,姿勢が不安定であると上肢運動を機能的に行うことができず,その改善も見込めない.我々は運動課題の反復による姿勢調節能の学習メカニズムについて調べた.健常若年者と高齢者に対し,リーチ動作課題,重錘捕球課題,床面が傾斜する外乱刺激課題を反復して行わせることにより,動作や姿勢が反復により改善するか,運動の予測がその改善に寄与するか,反射的・反応的な姿勢の応答も反復により変化するか,運動や姿勢の学習に加齢が影響を及ぼすかを詳細に検討した. 姿勢の制御の変化を観察するため下肢筋と体幹筋の合計6筋(前脛骨筋,腓腹筋,大腿直筋,大腿二頭筋,腹直筋,および脊柱起立筋)から筋活動を導出した.また,床反力計により足圧中心移動を,三次元動作解析装置により各身体セグメントの位置を記録した. リーチ動作課題と重錘捕球課題において,健常若年者と高齢者ともに繰り返しによる運動機能と姿勢機能の改善が見られた.しかしながら,高齢者では改善に要する反復回数が多く必要であった.また,改善の程度も小さかった.外乱刺激課題において外乱に対する姿勢筋の反射的応答は反復により劇的に減少した.このとき,空間内における姿勢の位置(オリエンテーション)が安定し,その動揺が劇的に減少した.このように,運動課題や外乱刺激課題により姿勢調節能が改善すること,その姿勢学習が運動の改善に寄与する可能性が示唆された.今後,この姿勢学習に対する体性感覚系の役割を調べることと,学習の持続効果や加齢の影響をさらに検討していくことが将来の超高齢化社会における予防的リハビリテーションの構築にとって重要な課題と考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常若年者と高齢者に対して随意運動時における姿勢学習を調べる実験を行えた.これは,予測的な行動における姿勢学習を期待しているが,予測のつかない外乱に対する姿勢学習の効果を調べる実験も行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
趣旨や研究方法に同意を得た若年健常者と高齢者を対象として随意運動時における姿勢学習を調べる.特に,その学習効果の持続性を検討し,それに加齢が関係するかまで調べる.また,姿勢学習における体性感覚系の役割や外乱刺激における姿勢学習も調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
姿勢学習における感覚系の役割を調べるため筋への振動刺激装置の作成を業者に依頼したが,その装置に様々な機能を持たせるよう要求したことで納期が遅れることが確定した.そのため次年度使用額が生じ,2018年度に納入することにした.
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額は筋への振動刺激装置の作成に充てる.現在,業者に機能追加を依頼しており,7月には完成し,納入できる予定になっている.
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