本研究は肩腱板断裂に対する腱板修復術を受けた患者が、術後の日常生活で手術を受けた肩を健常レベルまで活動させていくまでの過程と、その間の筋活動量の推移を明らかにすることを目的とした。また、術後1年まで追跡調査することで再断裂が生じる症例において術後の肩関節の活動量および筋活動量が影響しているかどうかを調べた。 肩関節活動量と筋活動の計測には小型のデータロガーを使用し、日中8時間連続の計測を実現することができた。これを使用し、1年追跡しえた腱板断裂術後患者24名、および年齢をマッチングさせた健常者10名と対象とし、日中の肩関節活動量および三角筋中部線維の筋活動量を計測した。腱板断裂術後患者は術後1か月、3か月、6カ月、9カ月、1年の時点で計測を行い、3か月の時点では術後と反対側肩の計測も行った。健常者は任意の1日に測定を行った。 その結果、術後1か月の時点では健常者の肩関節活動量より有意に少ない活動量を示していたが、術後3か月からは術後1か月と比べて有意に肩関節活動量が多くなり、健常者の活動量と有意差はなくなった。一方、三角筋の筋活動量は術後3か月まで健常者より有意に多い結果となり、術後経過に伴って増加していく肩関節活動量の推移パターンと反対の推移パターンを示していた。術後再断裂は1例のみであり、関連因子を特定することはできなかった。 本研究により、肩関節活動量は術後3か月には健常レベルに到達していることがわかった。このことより、活動量としては社会復帰レベルに到達できているといえるが、一方で再断裂が多いとされる術後3か月以内に肩関節活動量が増加しており、再断裂に寄与している可能性も考えられた。また、術後早期は三角筋活動量が多く、腱板筋群との筋活動バランスの速やかな是正が術後リハビリテーションでは重要となる可能性が示唆された。
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