研究課題/領域番号 |
15K01411
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
増田 正 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (00358003)
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研究分担者 |
森田 定雄 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 准教授 (20202426) [辞退]
相澤 純也 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (60376811)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 動作計測 / 無拘束 / キネクト / 歩行 / 歩幅 / 立脚時間 / フットスイッチ |
研究実績の概要 |
Microsoft社の開発した簡易動作計測装置Kinectを用い、リハビリテーション現場での要求が高いとされる歩行運動を対象として計測システムの開発を行った。得られた情報を、3次元動作計測装置並びに足裏に装着したフットスイッチと比較して精度検証を行った。 Kinectの出力する骨格情報(スケルトン)では十分な精度が得られないことが前年度までの研究で分かったので、スケルトン推定の元となるKinectの深度画像を利用した動作計測システムの開発を行った。Kinect1台だけでは、取得できる画像は被写体の半面だけで身体全体をカバーできないため、Kinect4台を連動させ、身体の表面形状全体を計測できるようにした。深度画像をKinectの最大転送速度である毎秒30フレームで取得するために、4台のKinectのそれぞれに専用のパソコンを割り当てて深度画像データを保存する構成とした。4台のパソコンの時間的な同期を取るために、全体に指示を送るパソコンをさらに別途設置し、LAN(ローカルネット)経由で計測開始の信号を送信するようにした。これらと並行して、5台目のKinectで被験者の骨格情報を取得し、比較を行った。 歩行はトレッドミル上で行わせ、その周囲に4台のKinect、正面に5台目のKinectを設置し、同時計測を行った。被験者は健康な成人男子10名とした。Kinectによる計測と同時に、3次元動作計測装置と足裏に装着した自作のフットスイッチで計測を行い、比較の基準値とした。歩行パラメータとして、1歩毎の歩幅と、立脚時間をそれぞれの計測手法で推定した。 その結果、深度画像を利用した方法の方が、スケルトンを用いた方法に比べて、歩幅の計測において、3次元動作計測装置による値により近い値を示し、精度が高いことが示された。立脚時間については、両方の方法で差が見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Kinectの深度画像に基づいた動作計測システムを作成することができた。この過程で、データ転送速度を維持するために各Kinectに1台ずつパソコンを割り当てたが、その結果、パソコン間の時間同期の問題が生じた。これを解決するために種々の方策を検討したが、最終的にLAN経由で開始信号を送信することにより数ミリ秒程度の時間差に留めることができた。複数Kinect間の位置合わせに関しては、他研究者の手法を参考にして直径30cmの発泡スチロール製の球体を同時撮影する方法を選択した。他にも任意物体の形状を基にカメラ位置を決定する方法も試みたがうまく行かなかった。 精度検証のための基準の内、空間パラメータについては既存の3次元動作計測装置を活用したが、時間パラメータについては足裏に装着するフットスイッチを自作した。当初はスイッチとしてオン/オフ機能だけのメンブレンスイッチを用いたが、床との接地状況をうまく捉えることができなかった。そこで、薄膜圧力センサーを用いて、抵抗値の変化を電圧に変換した後、マイコンでデジタル変換して、パソコンに転送し、得られた波形を適切な閾値でオン/オフ信号に変換した。マイコンとパソコンの通信を無線で行うことを試みたが、通信が安定せず今後の課題となった。また、検出した接地のタイミングには、まだ、ばらつきがあるので、センサの選択や装着の仕方にも改良を要する。 深度画像に基づく方法と並行して、Kinectのスケルトン機能利用したソフトウェアの開発も行った。現在、カラー画像、深度画像、骨格情報を取得し、骨格情報から関節角度を計算し、パソコンの画面上に波形表示するプログラムが出来上がった状態である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては、歩行動作中の下肢の運動を計測するために、下腿の表面形状に円筒モデルを当てはめて足首位置の推定を行った。この推定を容易にするために下腿に紙製の円筒を巻き付ける必要があった。円筒を巻き付けることによる手間があると、実際のリハビリテーション現場での利用においてKinectの簡便性を低減することになるので、下腿形状そのもののモデルを当てはめる等、円筒の装着をしないで済む方策を検討する。 4台のKinect装置を用いることにより計測システムが大規模化したため、実際の利用にあたっての設置の手間が問題になる。そこで、4台の装置で得られた場合の精度と、より台数を減らした場合の精度を比較して、どこまで台数を削減することが可能かを検証する。 推定する歩行パラメータの1つとして立脚時間を用い、フットスイッチを自作によって作成した。しかし、フットスイッチによる立脚時間の測定値自体に一定のばらつきが見られたので、比較対象としての信頼性に問題があった。このため、フットスイッチのセンサを改善するとともに、装着方法についてもより安定したデータが得られるように改良する。 これまでに用いていたKinectの改良版(Kinect v2)がマイクロソフト社より発売になった。改良版では、カラー及び深度画像の解像度が高くなり、骨格情報の精度も向上したとされている。そこで、Kinect v2用の計測ソフトを作成し、複数Kinectによって計測した深度画像に基づく方法を並行して、Kinect v2を用いて骨格情報の計測を行い、深度画像に基づく方法との精度比較を行う。 以上により、リハビリテーション現場で利用可能な計測システムにつなげる予定である。
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