研究課題/領域番号 |
15K01412
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
細 正博 金沢大学, 保健学系, 教授 (20219182)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 拘縮 / 坐骨神経 / Ⅳ型コラーゲン / ラミニン |
研究実績の概要 |
9週齢のWistar系雄ラットを用い,それを無作為にコントロール群,拘縮群,運動群の3群に分けた.拘縮群および運動群は麻酔後,右膝関節をキルシュナー鋼線と長ねじを使用した創外固定を用いて膝関節屈曲120°にて不動化した.この際,股関節,足関節に影響が及ばないように留意し,ラットはケージ内を自由に移動,水,餌は自由に摂取可能とした.拘縮群は不動化を2週間継続した.運動群は不動化処置の翌日よりイソフルランを用いた吸入麻酔により麻酔下で膝関節に対し2週間ROM-exを行い,ROM-ex時以外の期間は不動化を維持した.ROM-exは膝関節屈曲位を5秒間保持し,次にバネばかりを使用して右後肢を坐骨神経に伸張ストレスが加わるように体幹より120°腹頭側方向へ約1Nで牽引し5秒間保持する運動を3分間繰り返した.ROM-exは1日1回,週6回,2週間施行した.コントロール群は2週間の自由飼育とした.全群ともに実験期間終了後にジエチルエーテルにて安楽死させ,右後肢を股関節より離断した.採取した下肢を組織固定,脱灰を行った後に大腿骨の長軸方向に平行な面で切断し,中和後にパラフィン包埋して組織標本を作製した.作製したパラフィンブロックを約3μmにて薄切し,般染色としてヘマトキシリン・エオジン染色を行い,それに加え免疫染色も行った.免疫染色では一次抗体には抗Ⅳ型コラーゲン抗体を用い,観察部位は坐骨神経周囲組織の長軸方向に平行な断面とし,光学顕微鏡下に病理組織学的に観察した.結果、Ⅳ型コラーゲンの染色性は、固定群、運動群ともにコントロール群との間に差異を認めなかった。この結果は前年に行ったラミニンのものとは異なっており、同じ基底膜の主要成分であっても、Ⅳ型コラーゲンとラミニンでは異なった動態を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自に開発したキルシュナー鋼線を用いた外固定(Matsuzaki T, et.al:Influence of ROM Exercise on the Joint Components during Immobilization. J Phys Ther Sci 25(12) 2013)により、安定的にラット膝関節拘縮モデルを作成し、必発させることに成功している坐骨神経と神経周膜の「密着」について、その細胞外基質、とりわけ基底膜の変化が関与している可能性を示し、その主成分であるラミニンの減少を、予防的な関節可動域運動による治療により抑制できる可能性があること、およびもう一つの主成分であるⅣ型コラーゲンには変化が見られないことを報告した。これらはともに本研究にて初めて明らかにされた知見である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きラット膝拘縮モデルに発生する坐骨神経と神経周膜の「密着」について、細胞外基質の免疫染色にて検討する。検討対象としてフィブロネクチン、テネイシン、カドヘリン、CAM等の接着分子に注目し、これらが「密着」にどのように関与しているのかを明らかにする。また、これまでと同様にして、関節可動域運動の予防的効果について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的に予算を使用したこと、および次年度に購入予定の各種抗体と旅費に充当するため。
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次年度使用額の使用計画 |
各種抗体の購入と旅費に充当する予定。
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