研究課題/領域番号 |
15K01414
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 寿宏 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80214386)
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研究分担者 |
松島 佳苗 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60711538)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 感覚処理障害 / 自律神経 |
研究実績の概要 |
本研究は自閉症スペクトラム障害(ASD)児の感覚処理障害(Sensory Processing Disorder:SPD)に対し、科学的根拠に基づく支援を考えるために、ASD児と定型発達児の感覚刺激(聴覚と触覚)に対する自律神経活動(副交感神経)の違いについて分析する。 平成27年度は、①対象児のリクルート ②聴覚・触覚刺激の決定 ③ASD児・定型発達児の予備調査を実施した。 対象児はASD児、定型発達児各40名のリクルートが終了し、WISC-Ⅳ知能検査および対人応答性尺度とPARS-TRを用い、基準を満たすASD児37名、定型発達児32名の登録を行った。聴覚・触覚刺激はsensory challenge protocolに則り、羽による触覚刺激と84dBの純音を用いた聴覚刺激を用い、受動的・他動的感覚刺激と能動的感覚刺激の2条件によりカウンターバランスをとり提示を行うこととした。また、刺激前後には2分間の安静条件を設定した。副交感神経指標は心拍変動(HRV)の高周波成分(HF)を用い、心電図(Vitrode F150 M 日本光電)により計測した。また、交感神経は皮膚電気抵抗を指標として用いることとした。また、日常生活におけるSPDの行動指標を評価する目的で、日本版感覚プロファイルを保護者に記載してもらった。 予備調査としてASD児20名と定型発達児20名のデータを収集し、安静時の副交感神経指標であるHFをASD児と定型発達児で比較検討を行った。また、HFと日本版感覚プロファイルとの関係について検討を行った。 その結果、安静時の副交感神経の活動において、ASD児は定型発達児に比較し有意に低いHFの値を示した。また、40名の対象者全体において日本版感覚プロファイルの「低登録」「感覚過敏」「感覚回避」とHFの値に有意な負の相関(ρ=-0.36~-0.47)が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①対象児のリクルート 平成28年度終了までにASD児、定型発達児それぞれ30名づつを目標としていたが、今年度ですでに目標数のリクルートが終了し、ASD児37名、定型発達児32名の登録が終了している。 ②研究方法の決定・予備調査 研究方法の決定は当初計画通りに進行した。予備調査については定型発達児10名を対象とする予定であったが、ASD児20名と定型発達児20名のデータを収集できた。また、安静時の副交感神経指標であるHFをASD児と定型発達児で比較検討を行い、国内の学会発表と国際誌への発表ができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、登録したすべての対象児について、自律神経指標の計測、日本版感覚プロファイルを用いた評価を実施する。また、対象児数を増加し、より研究の質の向上を目指す。 データ解析はASD児と定型発達児の安静時における自律神経系(交感神経、副交感神経)の活動に違いがあるか否かを検討した上で、聴覚と触覚、受動・他動刺激と能動刺激による比較、行動指標と自律神経指標の関連について検討する。 当初の計画案では、副交感神経のみを指標とすることとしていたが、自律神経系においては交感神経と副交感神経の両者を評価することが推奨されていることから、新たな指標として交感神経指標を皮膚電気抵抗により計測することとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
聴覚刺激、触覚刺激を作成するための材料費が安価で行えたため、わずかであるが余剰金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画よりも対象児数を増やすため、それにかかる物品費(消耗品)にあてる。
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