研究実績の概要 |
本研究は自閉症スペクトラム障害(ASD)児の感覚処理障害に対し、科学的根拠に基づく支援の開発を目的に、6-12歳のASD児と定型発達(TD)児の感覚刺激(触覚と聴覚、受動・他動刺激と能動刺激)に対する自律神経活動の違いについて分析した。 対象児は、医師の診断とIQ80以上、対人応答性尺度とPARS-TRの基準を満たしたASD児37名、定型発達児37名であった。聴覚・触覚刺激はsensory challenge protocolを用い、受動的・他動的感覚刺激と能動的感覚刺激の2条件を提示した。刺激提示前後は2分間の安静条件を設定した。自律神経指標は心拍変動の高周波成分(HF-HRV)を用い副交感神経の活動を指標として用いた。統計解析は反復測定二元配置分散分析を用い触覚、聴覚それぞれの刺激における2グループ間、刺激間の差を検討した。 対象児属性は年齢、性別に有意な差はなかったが、IQにおいて有意な差(p<0.01)があった(ASD児:96.8±17.4、TD児114.8±12.2)。聴覚刺激においてグループ間[F(1,66)=0.16,p=.69]、感覚刺激の種類(受動・他動と能動)間 [F(1,66)=1.29,p=.26]の主効果は有意ではなかった。また、交互作用もなかった[F(1,66)=1.76,p =.18].。触覚刺激ではグループ間主効果は有意であり、ASD児はTD児よりもHF-HRV値が上昇した[F(1,72)=7.89,p<.01]が、感覚刺激の種類は有意ではなかった[F(1,72)=0.004,p=.95]。しかし、交互作用は有意[F(1,72)=5.37,p<.05]であった。 触覚刺激に関して、ASD群とTD群で副交感神経の活動に違いがあることが明らかとなった。ASD群では安静時よりも触覚刺激を提示している時に、副交感神経の活動が高まり、定型発達児では低下した。
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