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2016 年度 実施状況報告書

股関節疾患にみられる遠隔部の痛みの病態解明に向けた融合型研究とその臨床評価の意義

研究課題

研究課題/領域番号 15K01418
研究機関長崎大学

研究代表者

坂本 淳哉  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20584080)

研究分担者 中野 治郎  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20380834)
弦本 敏行  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (60304937)
真鍋 義孝  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (80131887)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード関連痛 / 二分軸索感覚ニューロン / 変形性股関節症
研究実績の概要

本年度は,関連痛の発生に関与すると仮説されている二分軸索感覚ニューロンについて,股関節と膝関節を同時に支配するニューロンが存在するか否か検討した.実験動物には,7週齢のWistar系雄性ラットを用い,各ラットの股関節腔内には逆行性にニューロンの細胞質に取り込まれて青色に発光するFast Blueを,膝関節腔にはニューロンの核に取り込まれて黄色に発光するNuclear Yellowを注入した.そして,Nuclear Yellow注入後48時間経過した後に灌流固定を行い,各ラットの股関節と膝関節の支配髄節にあたる両側のL1~L5の脊髄神経節(Dorsal root ganglia,以下,DRG)を摘出,凍結包埋し,20μm厚の凍結横断切片を各DRGにつき9切片作成し,各トレイサーに単独で標識された神経細胞ならびに両者に標識された神経細胞を計数した.また,解析に使用した切片に対してH&E染色像を施し,全神経細胞数を計数し,各DRGにおけるFast Blue標識細胞率,Nuclear Yellow標識細胞率,二重標識細胞率を算出した.その結果,Fast Blue標識細胞率およびNuclear Yellow標識細胞率は,いずれもL3のDRGで最も高く,次いで,L4髄節,L2髄節の順に高かった.そして,二重標識細胞はすべての髄節のDRGにおいて認められ,二重標識細胞率はL3髄節で最も高く,次いで,L4髄節,L2髄節の順に高かった.以上のことから,ラットにおいては股関節と膝関節を支配する二分軸索感覚ニューロンがL3を中心に存在することが示唆された.ただ,本年度の検索においては,これらの二分軸索感覚ニューロンが侵害受容ニューロンであるか否かについては,検討できれおらず,来年度に検索を進める予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度の成果として,関連痛の発生に関与すると仮説されている股関節と膝関節を同時に支配する二分軸索感覚ニューロンの存在が示唆する所見が得られているものの,これらの二分軸索感覚ニューロンが侵害受容ニューロンであるかについては検討できておらず,この点については来年度以降の検討課題となっている.したがって,本研究は当初の予定と比べるとやや遅れているといえる.

今後の研究の推進方策

次年度は,二分軸索感覚ニューロンに関する検討を継続するとともに,実際にこのニューロンが関連痛の発生に関与しているか否かについて検討を進める予定である.すなわち,関連痛の末梢説では,二分軸索感覚ニューロンの一方の軸索が支配する領域において炎症が惹起されると,他方の軸索に軸索反射が誘起され,その末端で神経性炎症が生じ,カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)やサブスタンスPが放出されることでることで患部の遠隔部に関連痛が発生すると仮説されている.そこで,変形性股関節症モデルラットを作成し,膝関節における圧痛覚閾値を関連痛の指標として採用し,その経時的変化について検討する.そして,膝関節の圧痛覚閾値の低下を認める場合には,膝関節を検索材料として,滑膜を含む関節包におけるCGRPやサブスタンスPの発現状況について免疫組織学的手法を用いて検討する.さらに,前述のモデルラットの膝関節内にCGRPのアンタゴニスト投与し,経時的に膝関節の圧痛覚閾値を測定することで,実際に圧痛覚閾値の低下が改善するか否か検討する.これらの検索で得られた結果と前年度までに得られた結果を比較照合することで関連痛の発生機序について検討する予定である.

次年度使用額が生じた理由

本年度は、ラットを用いて二分軸索感覚ニューロンの検索を実施しており、そのために必要なラットおよび逆行性神経トレイサー、免疫組織学的解析のための抗体・試薬等の購入を予定していたが、免疫組織学的検索の実施まで至らなかったため、抗体を購入しておらず、その差額等により次年度使用額が発生している。

次年度使用額の使用計画

次年度は、二分軸索感覚ニューロンが侵害受容ニューロンであるか否かについても免疫組織学的検索を実施するために必要な抗体の購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2016 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Effect of continuous passive motion initiated after the onset of arthritis on inflammation and secondary hyperalgesia in rats.2016

    • 著者名/発表者名
      Nakabayashi K, Sakamoto J, Kataoka H, Kondo Y, Hamaue Y, Honda Y, Nakano J, Okita M
    • 雑誌名

      Physiol Res.

      巻: 65 ページ: 683-691

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Association of early physical activity time with pain, activities of daily living, and progression of vertebral body collapse in patients with vertebral compression fractures: an observational study at single institution.2016

    • 著者名/発表者名
      Kataoka H, Ikemoto T, Yoshimura A, Shibuya M, Goto K, Yamashita J, Morita K, Sakamoto J, Nakano J, Okita M
    • 雑誌名

      Eur J Phys Rehabil Med.

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] アジュバント誘発炎症モデルラットの皮膚アロディニアに対するリモイスRコートの効果2016

    • 著者名/発表者名
      中野治郞,川内春奈,坂本淳哉,沼田 悟,岩嵜徹治,沖田 実
    • 雑誌名

      日本運動器疼痛学会誌

      巻: 8 ページ: 12-19

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 疼痛に対する物理療法の基礎的背景とエビデンス2016

    • 著者名/発表者名
      中野治郞,坂本淳哉,片岡英樹,沖田 実
    • 雑誌名

      理学療法

      巻: 33 ページ: 416-423

  • [学会発表] Effects of low-intensity muscle contraction and sensory input during the early stages of arthritis on joint swelling and pain.2016

    • 著者名/発表者名
      J. Sakamoto, K. Teranaka, Y. Kondo, Y. Hamaue, Y. Honda, H. Kataoka, J. Nakano, M. Okita
    • 学会等名
      16th World Congress on Pain
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県、横浜市)
    • 年月日
      2016-09-26 – 2016-09-30
    • 国際学会
  • [学会発表] The role of NGF in immobilization-induced hyperalgesia in rats.2016

    • 著者名/発表者名
      Y. Hamaue, J. Nakano, Y.Sekino, J. Sakamoto, M. Okita
    • 学会等名
      16th World Congress on Pain
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県、横浜市)
    • 年月日
      2016-09-26 – 2016-09-30
    • 国際学会
  • [学会発表] 不動に伴う痛覚過敏の発生メカニズムとその治療戦略に関する検討ーラット足関節不動化モデルに対する振動刺激の効果ー.2016

    • 著者名/発表者名
      濱上陽平,中野治郞,坂本淳哉,沖田 実
    • 学会等名
      第51回日本理学療法学術大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道、札幌市)
    • 年月日
      2016-05-27 – 2016-05-29
  • [学会発表] 股関節疾患患者にみられる関連痛の発生機序解明にむけた関節枝の分布状況に関する肉眼解剖学的検討2016

    • 著者名/発表者名
      坂本淳哉,真鍋義孝,弦本敏行,本田祐一郎,片岡英樹,中野治郎,沖田 実
    • 学会等名
      第51回日本理学療法学術大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道、札幌市)
    • 年月日
      2016-05-27 – 2016-05-29
  • [学会発表] 持続的他動運動がラット膝関節炎発症後早期の炎症や痛みにおよぼす影響.2016

    • 著者名/発表者名
      近藤康隆,坂本淳哉,寺中 香,片岡英樹,濵上陽平,佐々部陵,佐々木遼,中野治郎,沖田  実
    • 学会等名
      第51回日本理学療法学術大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道、札幌市)
    • 年月日
      2016-05-27 – 2016-05-29
  • [備考] 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科運動障害リハビリテーション学研究室

    • URL

      http://www2.am.nagasaki-u.ac.jp/pt/basic_pt/article.html

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公開日: 2018-01-16  

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