出力10Wの高強度な直線偏光近赤外線をパルス照射する治療器を用いて、この赤外線照射が筋緊張(筋伸張性)に与える影響と、筋の組織循環動態に与える影響、さらに筋力に与える影響を健常成人の下腿三頭筋を対象に検討した。直線偏光近赤外線照射により筋緊張は抑制され、筋伸張性は向上する傾向を示した。また筋力に与える影響では、直線偏光近赤外線照射後に、筋力が低下する対象と、反対に向上する対象が認められたが、全体として(統計学的に)の、照射による筋力に対する作用については、現在も解析を継続しているところである。また同様に、直線偏光近赤外線照射による筋の組織循環動態の変化については、現在、データ解析を進めているところである。 さらに、前年度から継続していた筋緊張と筋の組織循環動態の関連性の検討については、筋緊張評価指標であるAnkle Plantar Flexors Tone Scaleの指標のうち、筋緊張の非神経学的要素を反映するMiddle range resistance (MR)とFinal range resistance (FR)が、それぞれ酸化ヘモグロビン量と組織酸素飽和度量の間に中等度の負の相関を認めた。一方で、神経学的要素を反映するStretch reflex (SR)とは、酸化ヘモグロビン量、還元ヘモグロビン量、全ヘモグロビン量、組織酸素飽和度の全ての指標において相関を認めなかった。これらの結果から、筋緊張の非神経学的要素が亢進した状態では、酸素消費が増大し、酸素の供給量を上回っている可能性があるが、神経学的要素が亢進しているだけでは、酸素消費の上昇は生じないことが示唆されるという、知見を得ることができた。
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