研究課題/領域番号 |
15K01430
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研究機関 | 人間総合科学大学 |
研究代表者 |
秋山 純和 人間総合科学大学, 保健医療学部, 教授(移行) (10285976)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | MRI / 活動筋分析 / 運動分析 / 表面筋電法 / 前腕 / 瓶蓋開閉動作 / 深部筋 / 協同筋 |
研究実績の概要 |
我々は0.2TコンパクトMRIを用い骨格筋の運動分析に関する基礎研究を行ってきた。この装置は、低磁場であるがコンパクトであり、機動性があるため臨床での応用範囲が広いと考えられる。平成24年から平成27年で運動前後での筋活動が安定して分析可能となった(基盤研究(C)24500609)。本研究では小さい筋束で測定が高解像度となるよう口径13cmの小プローブを準備し、応用動作として日常生活に用いられる道具使用時における前腕筋の活動について分析を行っている(基盤研究(C)15K01430)。平成28年度は小プローブ用に前腕の固定装置の微調整と道具使用時における運動負荷方法について検討した。プローブの直径を小さくしたため、運動時はプローブ外で施行して、運動後にプローブに戻して撮像する方法とした。28年度は表面筋電図法での測定とマルチエコー法での画像観察を計画し検討した。表面筋電図法での電極位置とT2強調画像の比較では、表面筋電図法での電極位置に貼付したマーカーとT2強調画像を比較する方法に多くの時間を要した。筋を収縮させマーカーを貼付し、画像観察から修正して電極を置く方法とした。また画像から深部筋に対する電極位置を考案した(第87回理学療法科学学会、2017)。運動負荷方法については、漸増負荷について検討し何セット程度で観察可能か検討した(第44回日本磁気共鳴医学、2016)。長拇指外転筋と回外筋など小さい筋束の分析を可能とするため、小指伸筋、示指伸筋の活動を単独に等尺性収縮行い観察可能か検討した(第44回日本磁気共鳴医学会)。計画では握力把握系、精密把握系の順に実施することを計画していたが、研究上の流れから負荷方法を検討するため、精密把握系である瓶蓋の開閉動作を先行して検討している(第20回マイクロイメージング研究会,2016)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究ではより高解像となるように13cm 口径のプローブを使用している。このため新しくプローブ用に機能的固定具を作成したため、改良と微調整に多く時間を費やした。口径が小さいため運動をプローブ外で実施し、運動後に前腕をプローブ内に戻すようにしている。「瓶蓋の開ける」動作の観察のため、当初、安静時にMR画像を撮像後、プローブ外で運動とともに表面筋電図法で活動電位を導出した。プローブ内では筋電図用電極を外す必要があり、運動負荷時に両者の測定時間を近づけるように検討した。運動の終了は、オールアウトとしてすぐにプローブ内に戻して撮像した。しかし、瓶蓋の開閉動作では浅指屈筋、深指屈筋と手関節伸筋群が活動している様子が窺われ、活動の順位が明らかではないと推察された。このため運動負荷方法は、漸増法として活動の様子を確認しながら撮像すのが適切と考えられた。平成28年度は、把握動作系から順次測定する予定であったが、方法について検討する必要があり精密把握系である瓶蓋の開閉運動から検討しているところである。当初の計画では、道具使用時の活動筋分析にはマルチエコー法を考えていたが、道具使用時は把握動作に指の筋が活動するため、前腕を広範囲に観察できるマルチスライススピンエコー法が適切と考えられた。従来の方法である表面筋電図学的研究については、前腕の筋に関する研究報告は少ない状況にある。表面筋電図法とMRIの測定では時間差をなるべく近づけるための運動負荷方法について多くの時間を要した。また道具使用時の筋活動分析では、道具の種類と負荷方法を決定するのに多くの時間がかかった。道具使用時について、表面筋電図法の電極の貼付位置とMRI法による測定を調整するのに多くの時間がかかった。表面筋電図法では、従来どおり深部筋の活動電位の導出は困難と考えられた(第87回理学療法科学学会2017)。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではMRI法により前腕筋のほぼ全てを観察することができるため、深部筋と協同筋作用の分析が可能と考えられる。長短橈側手根伸筋と指伸筋群、長短橈側手根伸筋と回内筋、橈側手根屈筋と回外筋の協同作用が推察されるのであきらかにした。表面筋電図法では、手関節に対して抵抗を与えたときにクロストークの問題があり、従来から観察が容易ではないと考えられているので、MRI法により分析し明かにしたい。道具使用時に表面筋電図法とMR画像による観察で、深部筋と協同筋を含めての分析を進めることは、表面筋電図法を支援することに繋がるとも考えられる(第87回理学療法科学学会、2017)。現在、「瓶蓋の開ける」動作について検討を進めているが運動負荷方法の決定を臨床でも応用できることを意識して検討したい。当初マルチエコー法での分析を考えていたが、平成28年度の研究からマルチスライススピンエコー法で前腕の筋の活動様子を観察することが適切と考えられた。平成29年度は把握動作系では、「鍋の柄を持つ」、「傘の柄を持つ」、「荷物の柄を持つ」の動作項目について順次分析したい。当初3段階の負荷を行いと考えていたが、平成28年度の動作項目究から漸増法による方法が適切と感触を得たが含めて確認、検討したい。また、精密把握系として、「瓶蓋を開ける」、「消しゴムを使用する」、「レンガを持つ」の動作項目について順次分析したい。計画した動作項目をマルチスライススピンエコー法で動作分動を行った後に時間の許す限り当初計画したマルチコー法で動作項目についてT2緩和時間を測定したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表が近県で多くあり、旅費を使用する必要が生じなかった。また研究における装置の調整に多くの時間がかかり、被験者に対する謝金を充当する図書券の購入が当初より使用できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
学会発表旅費、論文化の費用に充当したい。画像処理装置について範囲で充当したいと考える。画像を計測するソフトについて8月に使用期限となるので充当したいと考える。
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