研究課題/領域番号 |
15K01438
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
木村 大介 関西福祉科学大学, 保健医療学部, 講師 (90513747)
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研究分担者 |
羽山 順子 広島国際大学, 心理学部, 講師 (00643256)
能登谷 晶子 京都学園大学, 健康医療学部, 教授 (30262570)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自律神経活動 / BPSD / 認知症 |
研究実績の概要 |
本研究は,①心拍変動解析による自律神経測定値がBPSDを予測できるのか,その有用性を検討すること,②自律神経バランスと関連するBPSD項目を検討することを目的とする. 対象は,認知症高齢者42名である.評価は,BPSDをNeuropsychiatric Inventory(NPI),自律神経測定には,TAS9 VIEW(株式会社YKC)で計測した.分析方法は,まず,NPIの中央値を算出,高値群と低値群の2群に分類し,自律神経の各パラメータを比較した.次に,有意差の認められた自律神経パラメータのReceiver Operating Characteristic curve(ROC)を作成,Area under the curve(AUC)を比較し,自律神経パラメータの有用性を検討した.さらに,自律神経バランスを示すLF/HFの1.00以上を交感神経優位群,未満を副交感神経優位群の2群に分類し,NPI合計得点および下位項目得点を比較した.比較検討にはいずれも対応のないt検定を用いた. NPIの中央値は3点であり,3点以上を高値群,3点未満を低値群に分類し,自律神経の各パラメータを比較した結果,LnTP,LnLF,LnHFで有意差が認められた.これら3つのパラメータのROCのAUCを比較したところ,いずれのAUCも45度直線下面積と比較して有意差が認められ,有用性が確認された.一方,自律神経バランスによるNPI項目の比較では,副交感神経優位時に,合計得点,無関心,異常行動で有意差が認められた. 本結果では,BPSDを示すNPIに関係する自律神経のパラメータは,LnTP,LnLF,LnHFで,それらの有用性も確認された.TPは自律神経の活性を示し,LFはやや副交感神経優位の成分を,HFは副交感神経成分を反映する.したがって,BPSDの発現時は,自律神経が活性化しており,その成分は副交感神経に由来すると解釈される.BPSDは交感神経優位なストレスフルな状態で発言するとされている.しかし,本結果では副交感神経優位時に無関心と異常行動がBPSDとして発現することが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析に必要なデータ数は確保できた.本年度は,心拍変動解析による自律神経活動が認知症高齢者のBPSDを予測することができるか,その妥当性を検討した.その結果,心拍変動解析による自律神経活動は,BPSDの発現を予測することができることが示唆された.一方,自律神経活動とBPSDの関連性を2つの分析方法で検討した.その結果,BPSDと関連する自律神経活動は,副交感神経活動に由来する成分で構成されていることが明らかになった.これら分析に加え,認知機能,自律神経活動,BPSDを共分散構造分析を用いて同時解析も実施した.この解析結果は,次年度に学会および論文発表の予定である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度では,これまでの解析結果を学会発表するとともに,既に発表を終えたテーマの論文執筆を予定している.また,次年度のテーマである自律神経活動を簡便な調査票に集約し,その妥当性と信頼性を検討する予定である.一方,昨年度に新たに分析項目に加えた認知機能を含めた,自律神経とBPSDの関連性の検討も引き続き実施していく計画である.さらに,認知機能の評価にNIRSを用いた発展的研究も予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度国際学会発表を見込んでいたが未発表となったため,未使用額が発生した.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度にOccupational Therapy Australia 2017 National Conferenceに「 The relationship between the autonomic nervous system and behavioral and psychological symptoms of dementia」の演題ですでにエントリーを終え,acceptとなっている(発表予定は,2017年7月).その旅費として未使用額を使用予定である.
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