研究課題/領域番号 |
15K01439
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
兒玉 隆之 京都橘大学, 健康科学部, 准教授 (80708371)
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研究分担者 |
村田 伸 京都橘大学, 健康科学部, 教授 (00389503)
中野 英樹 畿央大学, 健康科学部, 研究員 (60605559)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ニューロリハビリテーション / 運動錯覚 / 運動イメージ / LORETA |
研究実績の概要 |
これまで,振動刺激によって生成される運動錯覚は,健常者の脳内感覚運動皮質領野の神経活動性を高めることを見出した。しかし,その生成に影響を及ぼすとされる運動イメージ能力との関連性は未だ明らかではなく,脳血管障害患者にみられるような脳機能障害を呈する状態とのメカニズムに関する機能的差異は解明されていない。これらの点が明らかとなれば,振動刺激を用いた治療介入時に,同期的に運動イメージをシミュレートさせることで,より強力に感覚運動機能の再編へ向けた神経基盤の構築が可能になる。本研究は,運動錯覚生成過程における感覚運動領野を中心とした脳内関連領野の神経活動性および脳機能ネットワークを解明し,さらにそれらの結果を応用することで,ニューロリハビリテーションツールとしての多感覚刺激装置を開発するための基礎研究である。 平成27年度は,装置の基本システムの実証と運動錯覚生成メカニズムに及ぼす運動イメージ能力の影響および機能解明を目的に取り組んだ。 まず,装置開発の基本的なシステムとなるニューロフィードバックの介入効果について検討した。難治性疼痛患者に対して脳波信号のフィードバック介入を実施した結果,疼痛や不安傾向に減少が認められ,かつ脳波周波数解析から脳神経活動も変化することを報告した。さらに,脳血管障害患者に対する振動刺激によって,脳内に惹起される運動錯覚が脳神経活動へ及ぼす影響を検討した。その結果,運動イメージ誘起に関与するとされる感覚運動領野の有意な神経活動性を認めた。運動障害をもつ脳血管障害患者においても,運動錯覚が感覚運動領野の神経活動性を高める可能性を報告した。これらのことから,運動錯覚と運動イメージ能力の関係性や基本システムの有用性は明らかとなったが,装置開発に向けて,脳の半球間の活動特性や機能的関連性についての詳細な検証は,現在も研究を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度,多感覚刺激装置開発へ向けたシステム構築において重要となる,脳機能障害患者における運動錯覚の影響とニューロフィードバックの有用性に関しては,検討し報告した。 中でも,運動の実行へ向けた脳内神経活動に関して,その事前の活動として必要不可欠となる運動イメージ能力を誘起する脳領野が,運動錯覚の影響を受けることを明らかにした点は大きな進展であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に引き続き,当初計画していた通りに研究を遂行する。脳血管障害患者における解析は,運動錯覚と運動イメージの関連性については検証することができ順調である。平成28年度は,本患者のように脳の左右に機能的差異を有する状態において,運動イメージ能力が運動錯覚生成過程へどのような影響を及ぼし誘掖しているのか,健常者との違いを明らかにし,さらにイメージを創出した際の機能側性を詳細に検討する。これらを進めることで,運動錯覚に相乗的に運動イメージを付加できるような装置の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため,当初の見込み額と執行額が異なった。しかし,研究計画に変更はなく,当初予定通りの計画を進めていく。
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次年度使用額の使用計画 |
脳波データ解析用PC部品の納品が遅れ,平成27年度の研究費に未使用額が生じたが,次年度に納入されるため,今年度行う予定の研究計画と併せて実施する。
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