本年度は、37名の若年対象者に対して、昨年度と同様にBiodex System 3を用いて体幹屈伸筋力を測定した。また、超音波画像診断機器を用いて体幹筋の筋厚および筋輝度の測定を実施した。測定には超音波画像診断装置(LOGIQ Book XP GE Healthcare System)を用いた。測定部位は、腹直筋、外・内腹斜筋、腹横筋、腰部脊柱起立筋および第1~5腰椎レベルの多裂筋とし、測定肢位は腹部の筋は背臥位、腰背部の筋は腹臥位にて測定した。対象者のうち、腰痛を有する者とそうでない者とに分け、筋厚および筋輝度について比較したところ、腹筋群では腹直筋、内外腹斜筋、腹横筋の各筋においていずれも腰痛のない者の方がやや大きな値を示したが、両者での有意差は認められなかった。また、背筋群についても腰痛のない者の方がやや大きな値を示したが、有意差は認めなかった。 次に参加者のうち健常大学生10名および腰痛を有しない者9名を対象に、不安定座位における座位保持課題を行った時の体幹筋の筋活動を計測した。測定した被験筋は腰部脊柱起立筋、多裂筋、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋とした。得られたデータより腰部脊柱起立筋の筋活動に対する多裂筋の筋活動の割合(以下、L/G比)を求め、両群を比較検討したところ、健常群2.783(%)、腰痛群1.122(%)と腰痛群の方が有意に低かった。 これらことから、腰痛を有する若年者の体幹筋の特性として、超音波による体幹筋の形態的な違いはみられなかったが、重心動揺を制御する際の体幹筋の筋活動には、グローバル筋といわれる身体の表層筋に対してローカル筋といわれる深部筋の筋活動の割合が健常者に比べて小さくなるということが示唆された。
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