本研究の目的は腋窩型松葉杖歩行時に脇当てが腋窩から脱落しやすいという問題に対し、松葉杖構造の変更によって脇当ての脱落軽減に繋がるか否かを検証し、腋窩型松葉杖歩行の安全性および安定性の向上に寄与することである。この主題に対し、一昨年度および昨年度は松葉杖構造変更(握り角度の変更)の有用性について、合計21名の被験者を対象に検証を行った。 検証の結果、脇当ての胸壁側と上腕側に加わる圧差について被験者の多くで(約80%)現行(標準)握りに比し、5°握りまたは10°握りの構造変更を施した腋窩型松葉杖に統計学的有意差を認め、圧差が小さくなることが分かった。このことより握り角度の変更という松葉杖構造変更は、松葉杖歩行時の脇当ての腋窩内の安定性を向上させることに関し有用であり脇当ての腋窩からの脱落を軽減させる可能性が高いことが示唆された。しかしながら、構造変更(握り角度)の至適角度については個人差の影響が大きいことから結論が出なかった。 これまでの研究結果に基づき最終年度である今年度は、臨床応用に向けた臨床用松葉杖の製作、研究協力臨床施設の確保、そして知的財産権の取得を行った。まず、臨床用松葉杖(プロトタイプ松葉杖)の製作については松葉杖デザインや仕様に十分な検討期間を費やしたため完成が年度末となった。また松葉杖完成に合わせ、研究協力施設の確保を行い当該施設の倫理申請を行い承認を受けた。松葉杖完成が年度末となったため、臨床研究開始は4月から開始することなった。そのため臨床結果の検証、検証後の臨床への供給の検討等は次年度以降の課題となった。最後に知的財産権として実用新案登録を行った。
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