本研究では,パーキンソン病の運動系諸症状の緩和を目的として,前庭系を刺激するために仰臥位で頭頂から足先方向に水平搖動する全身振動装置の実用化に向けた改良を行った.機械的にはリンク等の稼動部品の強度向上と防音対策により,動作時の騒音は57dBから53dBに減り被験者の不安感を低減させることができた.この改良による性能向上により約200kgの荷重を1Hzの周波数まで安全に動作することができるようになった.また電気的には万が一に備えて通常の遮断器の他に漏電遮断器を併用し,さらに緊急停止スイッチを設けるなどして安全性の冗長を図った.その他,被験者昇降時の際や操作者の使用の際に触れる可能性がある全ての箇所にクッションや面取りを施し,使用時の安全性を向上させた.これらの結果,実際の診療施設やリハビリテーションの現場においても安全に利用でき,医療スタッフが簡単かつ安全に操作できる装置に到った. 次に,筋固縮症状を医師に代わり肘の動きの固さの評価を行う前腕搖動装置の開発と疑似上肢による肘関節の抵抗の推定実験を行った.実験装置は主に実際の診療現場で使用するための安全策を施した.また擬似上肢には角度に比例する機械的ばね抵抗を収め,入力トルクと出力角度波形から既約分解表現を用いた推定計算をMATLABにより行った.その結果,実測によるばね抵抗値に対して良好な推定値を求めることができなかった.これは実験データ測定時のサンプリングタイムが粗いことと,角度センサのゼロ位置のずれの調整で解決すると思われる.また筋固縮症状のもうひとつの臨床評価方法で,医師が上腕2頭筋の付根を指で押さえ,動作時の緊張度を触診により評価する臨床に対し,本研究では硬度計による数値化を提案し,上腕筋模型を対象にした筋収縮の測定実験により妥当であることを示した.
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