研究課題/領域番号 |
15K01449
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
阿部 匡樹 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (40392196)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 姿勢制御 / 立位 / 転倒防止 / 多感覚統合 |
研究実績の概要 |
加齢に伴う転倒事故の増大は寝たきりを誘発する大きな要因の一つに数えられ,高齢者の生活の質(QOL)に深刻な影響を与えるため,これを予防することは充実した社会福祉を目指す上で重要な課題となる。本研究では「頸部への振動刺激によって聴覚野と自己受容野を同時に刺激し,身体の揺れを感知する自己受容感覚の感度を効率的に増大させる」という斬新なアイデアを検証し,この刺激法がバランス能(平衡性)の向上にどの程度貢献するかを明らかにすることを目的とした。この目的に対し,1)頸部付近への振動刺激が足裏の自己受容感覚能を改善させるか否かを明らかにする,2)上記で得られた振動刺激法が実際にバランス能を向上させるか否かを明らかにする,という2つの目標を掲げた。 これらの目標を達成するため,①実験1:様々な部位の皮膚刺激による足裏感覚能の変化,②実験2:頸部刺激による静止立位時バランス能の変化,③実験3:頸部刺激による歩行時のバランス能の変化,を3年間で検討することとし,H28年度までに2)までの検討が計画されていた。H27年度の実験環境の構築に時間を要したこと,最適な頸部振動刺激(音刺激)の設定が予想以上に困難であることからやや時間を要しているが,最終年度にて全ての目標を達成可能な状況である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H27年度に整えた実験環境を用いて,様々なパターンの振動刺激・電気刺激を適用した。頸部への振動刺激に関して,当初は骨伝導ヘッドフォンを用いての適用を試みた。しかし,骨伝導ヘッドフォンは静止立位時や歩行時の適用には安全性の面からも有効であるが,基礎実験向けとしては刺激量の調整が困難であった。そこで,実験1においてはヘッドフォンによる音刺激を用いることとした。また,電気刺激に関しても,足裏と平行して先行研究で実績のある人差指への適用を行った。 音刺激に関しては,従来のpure toneに加えて確率共振を引き起こしうるホワイトノイズの適用を行った。皮膚への電気刺激に関しても,皮膚感覚の特性を考慮して2つのパターンの電気刺激を適用した。それと平行して,同様の音刺激における静止立位時の重心動揺計測を行った。 現状では,電気刺激レベルでは音刺激の効果が得られるものの劇的に改善されるレベルではなく,立位動揺への効果も有意なものではない。しかし,電気刺激および音刺激のパターンや組み合わせに改善の余地が残されているため,引き続き条件設定を変えながら実験を続けていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
上記に示したとおり,初年度は実験環境の構築に遅れが出たものの,その後は予定された実験を進めることができている。しかしながら,それによって適切な刺激設定が容易ではないことが明らかになってきた。実験1,実験2で十分に効果が検証できなければ実験3の検証の意味合いが弱くなるため,まずは実験2までの十分な検証を第一目標とし,その後に実験3の展開を試みたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H27年度に購入した電気刺激装置の経費が予定よりも安価で済んだことが主な理由となる。また,その代替として今年度中に購入予定であったデータ解析用PCの発売が遅れた。
|
次年度使用額の使用計画 |
データ解析用のPCを購入するとともに,実験に用いる消耗品,論文投稿・掲載に必要となる経費としたい。
|