1.心拍測定方法について:従来,心拍は胸に心拍計を貼り付けて測定してきた。これは最も一般的な方法であるが,胸を清浄にする手間や,測定用ケーブルが服の下からぶらさがる違和感など,実験協力者に余計なストレスを生じさせる懸念があった。そこで腕時計型の心拍測定装置を導入し,従来の心拍計と同時測定を行った。スポーツ時の心拍管理用で腕に巻くだけで準備不要で装着時の違和感も少ないことが感想として得られた。 2.心拍変動の解析について:タスク検索時に迷っていると思われる箇所(操作時のウィンドウ画面の録画から推定)での比較的短時間の滞留でも,腕時計型の心拍計で心拍変動を測定することができた。心拍計測の定番のデータ処理法であるフーリエ解析を行うには十分でないが,本実験での単純な心拍変動測定であれば活用できる可能性がある。 3.主観評価と生理的指標について:本研究は,ウェブ検索中に,どのような場面で迷い,どの程度のストレスになるのか,を計測し,その結果から検索効率が良く,かつ心的負担の少ないウェブサイトのあり方を明らかにすることである。主観評価(NASA-TLX)と生理的指標(心拍変動)の組合せに着目し検索実験を進めている。上述の心拍変動は,ウェブ検索時の迷った際に変化し,確かにストレスの強度を表現していると考えられる。このことは興味深い成果である。しかし,検索終了後に測定したNASA-TLXの値に対して,検索のどの時点で迷ったか,その迷いの時点と主観評価との相関については,まだ十分な結果が得られたとは言えない。例えてみると「最初が肝心」か「終わりよければすべてよし」なのかは明らかではない。個人の感じ方,検索に要した総時間,全体の検索の難易度,などが主観評価に関係していると考えられる。実験協力者を増やしたり,検索難易度の異なるウェブサイトで測定したりして,その精度を上げるのは今後の課題としたい。
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